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反復で積分方程式を解く〜どこまで係数を大きくできるか

次の形の方程式を解きます。未知の関数が積分の中にも外にも現れる形です[3]

右辺に を入れ直す。これを繰り返すと級数ができます[1]

ノイマン級数です。 が小さければ収束します。では、どこまで大きくできるのか。

核を決める

計算しやすい核をとります。

に分かれているので、積分の外へ を出せます。

出てくるのは の定数倍だけです。像が 次元なので、 は階数 の作用素になります。

ノルムとスペクトル半径

に当てます。 なので、次のようになります。

は固有値 の固有関数です。像が の定数倍だけなので、これ以外の固有値は しかありません。

スペクトル半径は です。 での作用素ノルムも同じ値になります。

級数 が収束するのは のとき[2]。つまり次の範囲です。

厳密解を先に出す

核が分かれているので、厳密解は連立方程式に落ちます[3]

とおくと、方程式は という形になります。

これを の定義に代入します。 の場合で計算しましょう。

について解くと です。答えが書けました。

で分母が消えます。これが固有値で、そこでは解が作れません[3]

例:λ = 1 で反復する

から始め、 を繰り返します。

なので です。

次は なので になります。

同じように続けると係数が並びます。

回数 の係数厳密解との差

厳密解は です。差が毎回 になっている。

これは という比そのものです。収束の速さが、はじめから計算で分かります。

例:λ = 4 では発散する

同じ反復を でやります。 と増えていきます。

係数は 倍ずつ大きくなる。 を外れているので、級数が収束しません。

ところが厳密解は存在します。式に を入れましょう。

確かめます。 です。

で、もとの に戻りました。解は確かに存在します。

級数が発散することと、解がないことは別の話です。収束半径は解法の限界であって、方程式の限界ではありません。

で級数が使えないのは、反復という解き方が届かないからです。

核が分かれている場合は連立方程式に落とせるので、そちらの道なら答えが出る。

λ を動かして眺める

を複素平面で動かすと、 つの領域に分かれます。

では級数が収束し、反復で答えが出る。
では分母が消え、解が存在しない。
それ以外では級数が発散するが、厳密解は存在する。

固有値 の逆数が です。特性値と呼ばれる量で、ここが解ける範囲の境目になります[3]

例:核を変える

にすると、固有値が半分になります。 です。

収束する範囲は に広がります。核を小さくすると、反復が効く範囲が広がる。

逆に なら固有値が になり、 でしか反復が使えません。

核の大きさと解ける範囲は反比例します。核のノルムを先に見積もっておくと、反復を始める前に見通しが立ちます[1]

例:一般の核での見積もり

分かれていない核でも、上からの評価はできます。二乗の積分を使います。

で計算すると なので、上限は です。

今回は階数 なので、上限と実際のノルムが一致しました。一般には上限のほうが大きくなります。

この評価だけでも、 の安全な範囲が出せます[1]

解の形が λ でどう変わるか

の係数を並べます。

の係数

に近づけると係数が飛びます。 を越えると符号が変わる。

固有値の位置で解が破綻し、その先で符号が反転する。有限次元の連立方程式で行列式が になる場面と同じ構造です。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

収束する範囲の出し方を、もう一度たどっておきます。

核が のとき、ノイマン級数が収束する の範囲はどれですか。

__RESULT__

なのでスペクトル半径は です。 を解くと になります。 は逆数をとり忘れた範囲、 は核の大きさを と見た場合になります。

検算のしかた

反復で出した近似解は、もとの方程式に入れて確かめます。 の両辺を計算し、差の大きさを見る。

厳密解が書ける場合は、そちらと突き合わせます。差が毎回 倍で縮んでいるかも確かめておきたい。

比が合わなければ、 のノルムの見積もりが違っています。核の積分をやり直します。

が特性値に近いときは、収束が遅くなります。 なら比が なので、 桁縮めるのに 回ほど要ります。

参考文献

Neumann series. Encyclopedia of Mathematics.
Neumann Series. MathWorld.
Fredholm equation. Encyclopedia of Mathematics.
$u = f + \lambda K u$ を反復で解きます。核が $xy$ なら $Kx = x/3$ で、スペクトル半径は $1/3$。級数が収束するのは $|\lambda| < 3$ のときです。$\lambda = 1$ で回すと $x$ の係数が $0.500$、$0.667$、$0.722$、$0.741$ と $0.75$ へ寄り、差は毎回 $1/3$ に縮む。$\lambda = 4$ では発散しますが、厳密解 $1 - 6x$ は存在します。級数が届かないことと、解がないことは別。特性値 $\lambda = 3$ でだけ解が消えます。