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特異値さえ出せば階級が決まる!トレースクラスかどうかの判定

作用素がコンパクトか、ヒルベルト・シュミットか、トレースクラスか。判定は特異値の並びを見るだけで済みます[3]。

和が収束すればトレースクラス、二乗和が収束すればヒルベルト・シュミット、 へ向かうだけならコンパクト。

数列の収束判定に落ちるので、 級数と比べれば答えが出ます。まず特異値の出し方から始めます。

特異値の出し方

行列 の特異値は、 の固有値の平方根です[1]。

は正の作用素なので、固有値は非負です。平方根がそのままとれます。

問 1:2 次の行列で計算する

次の行列で試します。

を計算しましょう。

固有値は なので と です。平方根をとると特異値が出ます。

検算します。特異値の積は で、 と一致しました。

つのノルムも出せます。作用素ノルムは最大の特異値で 。

ヒルベルト・シュミットノルムは二乗和の平方根なので です[3]。成分の二乗和 とも合います。

トレースノルムは和そのもので になります[2]。

問 2:黄金比が出てくる行列

次の行列でも計算します。

積を計算します。

固有値はトレース と行列式 から出ます。

数値では と です。平方根をとると と になります。

黄金比とその逆数でした。積は で、 と一致します。

作用素ノルムは です。行列の成分はどれも 以下なのに、ノルムは を超えている。

問 3:対角作用素で階級を決める

で とします。特異値はそのまま です。

判定は 級数の収束で決まります[3]。

条件収束するのは結論
トレースクラス
ヒルベルト・シュミット
コンパクト

の値ごとに答えを並べます。

なら で収束するので、トレースクラスです。

では和が発散し、二乗和は収束します。ヒルベルト・シュミットどまり。

でも和は発散します。二乗和は で収束するので、やはりヒルベルト・シュミットです。

になると二乗和が調和級数になり発散します。コンパクトではあるが、それ以上ではない。

なら特異値が のまま。 へ向かわないので、コンパクトですらありません。

問 4:境目の数列

級数の境目のすぐそばも試します。 とおきましょう。

和は発散します。積分と比べると で、これは無限に伸びる。

二乗和のほうは収束します。 は より小さいためです。

トレースクラスではなく、ヒルベルト・シュミットです。 の場合と同じ結論になりました。

対数を掛けても境目は動きません。効くのは のべきのほうです。

問 5:積分作用素

核が二乗可積分なら、ヒルベルト・シュミットノルムが核のノルムに一致します[3]。

で計算します。 なので、ノルムは です。

この作用素は階数 で、特異値は が つだけ。和も二乗和も有限なので、トレースクラスでもあります。

有限階数の作用素はいつでもトレースクラスです[2]。判定に迷う場面は、特異値が無限に続くときだけになります。

問 6:ヴォルテラ作用素

の積分作用素 を見ます。特異値は次の形です。

と同じ速さで落ちます。 の場合にあたるので、二乗和は収束、和は発散です。

ヒルベルト・シュミットではあるが、トレースクラスではない。境目にちょうど乗っています。

核から確かめることもできます。 は で 、それ以外で なので、二乗の積分は三角形の面積 です。

特異値の二乗和からも同じ値が出ます。 です。

手順のまとめ

判定は 段階で終わります。

の固有値を求め、平方根をとって特異値を出す。
特異値の落ち方を と比べ、 を読む。
ならトレースクラス、 ならヒルベルト・シュミット、 ならコンパクト。

行列のように特異値が有限個なら、無条件でトレースクラスです[4]。

特異値が有限個

どの和も有限。階級を考える必要がない

特異値が無限に続く

落ちる速さで階級が分かれる。 級数と比べる

落ち方が境目に近い場合で、手順をもう一度当てます。

特異値が の作用素は、どの階級に入りますか。

  • トレースクラス
  • ヒルベルト・シュミットだがトレースクラスではない
  • コンパクトでもない
__RESULT__

和は で、指数が 以下なので発散します。二乗和は で、指数が を超えるので収束する。よってヒルベルト・シュミットどまりです。 へ向かうのでコンパクトではあります。

検算

特異値を出したら、まず積を と比べます。 次なら になるはずです。

二乗和も確かめられます。ヒルベルト・シュミットノルムは成分の二乗和に等しいので、 を突き合わせる[3]。

問 1 なら と で一致しました。

積分作用素なら、核の二乗積分と特異値の二乗和を比べます。ヴォルテラ作用素では、どちらも になりました。

固有値と特異値を混同していないかも見ておきたい。ヴォルテラ作用素は固有値を つも持ちませんが、特異値は無限に並びます。

参考

Singular Value. MathWorld.
Nuclear operator. Encyclopedia of Mathematics.
Hilbert-Schmidt operator. Encyclopedia of Mathematics.
Volterra operator. Encyclopedia of Mathematics.
特異値は $A^{*}A$ の固有値の平方根です。並べたあとは $p$ 級数との比較だけ。和が収束すればトレースクラス、二乗和が収束すればヒルベルト・シュミット、$0$ へ向かうだけならコンパクトです。$s_n = n^{-p}$ なら境目は $1$ と $1/2$。対角成分が $3$ と $5$、左下が $4$ の行列では特異値が $\sqrt{45}$ と $\sqrt{5}$ になり、積が $|\det A| = 15$ と合います。ヴォルテラ作用素がちょうど境目に乗ることも計算しました。