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何回まわせば足りるか - 反復の回数を先に見積もる

縮小写像を反復すれば不動点に近づく。では何回まわせば、小数第 位まで合うのか[2]。

答えは回す前に出せる。縮む比 と、最初の 歩の幅だけで決まる。

見積もりを立ててから実際に回し、どれだけ余裕があったかを確かめる。

誤差の評価を作る

、 とする[1]。

歩ずつの幅は等比数列でおさえられる。

不動点までの距離は、そこから先の幅を全部足したものより小さい。

回す前に分かるので、事前評価と呼ばれる。 と最初の 歩だけで書けている。

途中まで回したあとなら、もっと締まった形が使える。

こちらは事後評価である。実際に縮んだ幅を見るので、見積もりが現実に寄る。

題材を決める

を でとる。不動点は の解である[3]。

縮む比は導関数の最大値から出る。 で、 での最大は である。

に近い。あまり縮まない写像だと分かる。

出発点を とすると で、最初の 歩は である。

必要な回数を出す

小数第 位、つまり誤差 を目標にする。事前評価の式に入れる。

なので、 が条件になる。

両辺の対数をとる。 の底は何でもよい。

回である。回す前に、必要な回数が決まった。

実際に回してみる

から順に計算する。値は 回ごとに拾う。

回数値誤差

不動点は である[3]。誤差が 回ごとに 倍になっている。

回あたりでは 倍である。これは不動点での傾き に一致する。

の比で まで縮めるなら、必要なのは 回ほどになる。

見積もりの 回に対し、実際は 回で足りた。 倍の余裕があったことになる。

差が出る理由

を区間全体での最大値からとったためである。 の右端では傾きが だが、不動点の近くでは しかない。

反復はすぐ不動点の近くへ入るので、そこから先は小さいほうの比で縮む。事前評価は安全側に振れる。

事後評価を使うと差が縮まる。 回まわした時点で なので、次の値が出る。

実際の誤差 に対してまだ 倍ゆるい。それでも事前評価よりは締まっている。

比が 1 に近づくと跳ねる

を変えて、必要な回数を並べる。目標は同じ 、最初の 歩も とする。

必要な回数

が に近づくと回数が跳ね上がる。 から へ動かしただけで 倍になった。

分母の が に近づくためである。 なら で、回数は に反比例する。

ニュートン法と比べる

同じ方程式を別の反復で解く。 の零点を探す形にする[4]。

から回すと、、、 になる。

誤差を並べると 、、、 程度である。

桁数が毎回およそ倍になっている。二次収束と呼ばれる速さで、縮小写像の一次収束とは別の型になる[4]。

回で を越えた。 回と 回の差が、収束の型の差である。

どちらを選ぶか

ニュートン法が速いが、導関数が要る。零点の近くから始めないと外れることもある[4]。

縮小写像の反復は遅いかわり、 さえ言えればどこから始めても届く[1]。しかも回数が先に読める。

作用素の方程式では導関数が作れない場面が多い。そのときは、遅くても確実な道を選ぶことになる。

縮小写像の反復

比が で毎回縮む。回数を先に読める。出発点を選ばない

ニュートン法

桁数が毎回倍になる。導関数が要り、近くから始める必要がある

回数の出し方を、比を変えてもう一度たどる。

縮む比が 、最初の 歩が のとき、誤差 に届くまでの回数はどれに近いか。

  • 回
  • 回
  • 回
__RESULT__

を解く。 をとると なので 回である。 回は の場合、 回は の場合になる。

よくある誤り

を不動点での傾きからとる。区間全体での最大値が要る。
事前評価と実際の回数が一致すると考える。安全側に振れる。
でも収束すると思う。縮む保証がなくなる。
出発点を変えれば回数が大きく減ると考える。効くのは対数の中だけで、比のほうが支配する。
ニュートン法がいつでも速いとする。出発点が遠いと外れる。
事後評価を回す前に使おうとする。実際に動いた幅が要る。

比を見積もり、回数を計算し、それから回す。この順番にすると、いつ止めてよいかが最初から分かる。

出典

Contracting-mapping principle. Encyclopedia of Mathematics.
Banach Fixed Point Theorem. MathWorld.
Dottie Number. MathWorld.
Newton's Method. MathWorld.
縮小写像の反復は、回す前に必要な回数を出せます。$\cos x$ を $[0, 1]$ で反復するなら $k = \sin 1 = 0.8415$ で、誤差 $10^{-6}$ までは 86 回という見積もり。実際に回すと 32 回で足りました。差が出るのは $k$ を区間全体の最大値からとるためで、不動点のそばでは傾きが $0.674$ しかない。$k$ が $0.99$ になると 1736 回まで跳ね上がります。桁数が毎回倍になるニュートン法との比較も並べました。