「連続関数の列」の一様収束における極限は連続関数になる|証明と、仮定をどこまでゆるめられるか
連続な関数を並べて極限を取っても、極限が連続とは限りません。各点収束では飛びが生まれます。
一様収束を仮定すると飛べなくなります。これが一様収束の極限定理で、証明は を 3 つに割る 1 本の三角不等式で終わります。
以下では主張を正確に述べ、証明を書き下し、一様性がどこで効いているのかを確かめます。そのうえで仮定をどこまでゆるめられるか、逆が成り立つのはどんなときかまで扱います。
主張を正確に述べる
定理。 を位相空間、 を距離空間とします。関数列 が に一様収束し、各 が連続であるとします。このとき は連続です。
一様収束とは、番号 を点によらず 1 つ選べる、ということでした。
が より後ろにある点が要です。各点収束では順序が逆になり、 が ごとに変わります。
実数値で区間の上の話に限れば、 が連続で一様収束するなら極限も連続、という形になります。
直観:幅 2ε の帯から出られない
一様収束は「極限 を中心とする幅 の帯の中に、番号の大きい がすっぽり入る」ことだと読めます。
もし が 1 点で飛んでいるとしましょう。飛びの高さより を小さく取ると、帯は飛びのところで上下に分かれます。
連続な がこの帯の中を通り抜けるには、分かれた 2 つの帯を連続的に行き来しなければなりません。しかし帯の間には隙間があるので、途中で必ず外に出ます。
<svg viewBox="0 0 460 240" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<line x1="60" y1="132" x2="225" y2="132" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 3"></line>
<line x1="60" y1="168" x2="225" y2="168" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 3"></line>
<line x1="235" y1="72" x2="400" y2="72" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 3"></line>
<line x1="235" y1="108" x2="400" y2="108" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 3"></line>
<line x1="60" y1="150" x2="225" y2="150" stroke="#1f1f1f" stroke-width="2"></line>
<line x1="235" y1="90" x2="400" y2="90" stroke="#1f1f1f" stroke-width="2"></line>
<polyline points="60,150 215,150 245,90 400,90" fill="none" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.5"></polyline>
<line x1="230" y1="108" x2="230" y2="132" stroke="#d0562a" stroke-width="2.5"></line>
<text x="55" y="26" font-size="11" fill="#1f1f1f">極限が飛ぶなら、連続な関数は帯からはみ出さざるをえない</text>
<text x="118" y="144" font-size="11" fill="#1f1f1f">極限 f</text>
<text x="66" y="188" font-size="11" fill="#9a9a9a">幅 2ε の帯</text>
<text x="246" y="126" font-size="11" fill="#d0562a">帯の外に出る</text>
<text x="320" y="128" font-size="11" fill="#1b81e0">連続な関数</text>
<text x="55" y="228" font-size="11" fill="#9a9a9a">極限が不連続なら、収束は一様ではない</text>
</svg>なぜ ε を 3 つに割るのか
示したいのは が小さいことです。ところが について直接わかっているのは、 に近いということだけです。
そこで を経由します。 から へ、 から へ、 から へと 3 歩で渡ります。
f から f_n へ移る
f_n の中で動く
f_n から f へ戻る
3 歩それぞれを で押さえれば、合計が になります。両端の 2 歩は一様収束が、真ん中の 1 歩は の連続性が担当します。
証明
と を取ります。
一様収束から、番号 が存在して、すべての について次が成り立ちます。この は に依存しません。
は で連続なので、 の近傍 が存在して、 なら次が成り立ちます。
を取り、三角不等式を 2 回使います。
右辺の第 1 項は 1 つ目の評価を に、第 3 項は同じ評価を に当てたものです。第 2 項は近傍の取り方から押さえられます。
は任意だったので、 は で連続です。 は任意なので、 は 全体で連続になります。
一様性が効いたのは 1 か所だけ
証明で一様収束を使ったのは、同じ番号 を と の両方に当てたところです。ここだけです。
各点収束しか仮定しないと、 に対する番号 と に対する番号 が別々になります。
順序を思い出してください。近傍 を取るには、先に を 1 つ固定しなければなりません。ところが は とともに動き、 を決める前に は決まりません。
が に依らないことが、この循環を断ち切っています。 を 3 つに割る技法そのものより、この 1 点のほうが本質です。
論法の中で、一様収束が本当に必要になるのはどこですか。
- の連続性から近傍 を取るところ
- 同じ番号 を と の両方に使うところ
- 三角不等式で 3 つの項に分けるところ
計算例:各点収束では飛びが生まれる
を で考えます。各 は多項式なので連続です。
では 、 では のままです。極限関数は でだけ を取ります。
は で不連続です。定理の対偶から、この収束は一様ではないと分かります。
実際、差の上限は で、 によらず のままです。
計算例:ちぎれる位置が真ん中にある場合
を で考えます。各項は連続です。
では なので値は のままです。それ以外の点では なので に収束します。
極限は でだけ を取る関数で、そこで不連続です。したがって一様収束していません。
飛びの位置は端でなくてもかまいません。連続な関数を並べておいて、極限で 1 点だけ突き出させることができます。
計算例:階段に近づく列
を で考えます。各項は連続で、有界です。
なら なので 、 なら 、 では のままです。
極限は原点で飛ぶ階段状の関数になり、連続ではありません。ここでも一様収束は成り立ちません。
3 つの例に共通するのは、収束の速さが場所によって際限なく違うことです。飛びの近くだけ、いくらでも遅くなります。
対偶として使うのがいちばん多い
実務では、定理そのものより対偶を使う場面が多くなります。
極限関数が不連続なら、収束は一様ではない。これで上限を計算せずに一様収束を否定できます。
上の 3 例はどれもこの形で片づきました。極限を求めて連続性を見るだけなので、 の見積もりより手軽です。
ただし逆は言えません。極限が連続でも、一様収束しているとは限りません。あとの節で扱います。
仮定は 1 点に落とせる
定理を各点の主張として述べ直すと、仮定がずっと軽くなります。
各 が点 で連続で、 が一様収束するなら、 は で連続です。 以外での連続性は使っていません。
証明を読み返すと、 の連続性を使ったのは の近傍を取る 1 か所だけです。他の点では何も要求していません。
たとえば各 が有理数の点で不連続でも、 で連続でありさえすれば結論は変わりません。
一様収束も局所でよい
連続性は局所的な性質なので、一様収束も局所で足ります。
のある近傍の上で が一様収束すれば、 は で連続です。定義域全体での一様収束は要りません。
したがって、各点のまわりで一様収束していれば極限は全体で連続になります。これを局所一様収束といいます。
コンパクト集合ごとに一様収束する広義一様収束も、局所一様収束を含みます。べき級数が収束円の内部で連続なのは、この形の議論です。
定義域全体で 1 つの番号が効くこと。強い条件ですが、連続性を言うためだけならここまで要りません。
各点のまわりの小さい範囲で一様収束すること。連続性は局所的な性質なので、これで十分です。
定義域と値域はどこまで一般でよいか
証明で定義域に使ったのは「近傍」という言葉だけです。距離も座標も使っていません。したがって定義域は位相空間でかまいません。
値域には三角不等式が要るので、距離空間である必要があります。ただし完備性は使っていません。極限 が最初から与えられているからです。
の完備性が効くのは別の場面です。極限が存在することを一様コーシー列から言いたいときに要ります。
一様コーシー列と極限の存在
極限 が与えられていない状況では、まずその存在を言う必要があります。ここで完備性が働きます。
関数列 が一様コーシー列であるとは、次が成り立つことをいいます。番号が によらない点は、一様収束と同じです。
が完備なら、各点 で数列 はコーシー列なので収束します。その極限を と定めます。
上の不等式で とすると、 とすべての について が成り立ちます。 は によらないので、収束は一様です。
極限の存在まで込みで扱いたいときは、この形で使います。そのうえで元の定理を当てれば、極限が連続であることまで言えます。
一様連続性も保たれる
同じ の形で、もう少し強い主張も出ます。
定理。各 が一様連続で、 が一様収束するなら、 も一様連続です。
証明。 に対し、一様収束から を取って、すべての で とします。
の一様連続性から が取れて、 なら です。この は点によりません。
先ほどと同じ三角不等式で が出ます。 が点によらないので、結論も一様連続になります。
違いは、真ん中の 1 歩を点ごとの連続性で押さえるか、一様連続性で押さえるかだけです。
関数空間の言葉に直す
有界関数の全体 に、上限ノルムを入れます。
このノルムによる収束が、一様収束そのものです。 はこのノルムで完備になります。
一様収束の極限定理は、この言葉では次のように読めます。有界な連続関数の全体 は、 の閉部分集合である。
完備距離空間の閉部分集合は完備なので、 も完備です。つまり はバナッハ空間になります。
「連続関数の一様収束極限は連続」という主張と、「連続関数の空間は閉じている」という主張は、同じことの言い換えです。
定理の使い道:極限で関数を定義する
この定理がいちばん働くのは、関数を無限和や極限で定義したときです。
定義式から直接 と を追いかけるのは大変です。ところが一様収束さえ確かめれば、連続性はただで付いてきます。
級数なら、部分和が連続であることは有限和なので明らかです。あとは一様収束を言えばよく、その道具がワイエルシュトラスの 判定法です。
計算例:級数で定義された関数の連続性
次の関数が 全体で連続であることを示します。
各項は で押さえられます。 が収束するので、 判定法から級数は一様収束します。
部分和はすべて連続です。一様収束の極限定理から、和 も連続になります。
の閉じた形を求める必要はありません。上限を 1 つ押さえるだけで、連続性が出てしまいます。
計算例:どこでも微分できない連続関数
同じ手口で、扱いにくい関数の連続性も言えます。
各項は で押さえられ、 は収束します。したがって級数は一様収束し、 は連続です。
ところが が十分大きいと、 はどの点でも微分できません。ワイエルシュトラス関数と呼ばれる例です。
連続性は一様収束から自動的に出ますが、微分可能性は保証されません。この関数は、その差をいちばん極端な形で見せています。
逆は成り立たない
極限が連続だからといって、収束が一様とは限りません。
を に制限します。各点極限は で、連続です。ところが なので一様収束しません。
動く山の例もあります。 を、 の外では 、 で高さ になる三角形とします。
各点では に収束し、極限は連続です。しかし山の高さは のままなので、上限は に行きません。
定理は十分条件を与えているだけで、必要条件ではありません。
連続関数の列の各点極限が連続になるための、必要十分条件はどれですか。
- 一様収束すること
- 擬一様収束すること
- 各項が有界であること
一様収束は十分条件ですが必要ではありません。 上の が反例です。必要十分になるのは擬一様収束という弱い条件で、アルツェラの定理と呼ばれます。
逆を成り立たせる追加条件
条件を足せば逆も言えます。よく使われるのがディニの定理です。
をコンパクト、 を連続、 が各点で単調に へ収束し、 が連続であるとします。このとき収束は一様です。
コンパクト性と単調性と極限の連続性、この 3 つがそろって初めて言えます。どれか 1 つを外すと反例があります。
上に挙げた 上の は、単調で極限も連続ですが、定義域がコンパクトでないので結論が出ません。
本当の必要十分条件
一様収束より弱く、しかも必要十分になる条件が知られています。擬一様収束といいます。
各点収束する連続関数列 について、 が連続であることと、 が に擬一様収束することは同値です。アルツェラの定理と呼ばれ、アレクサンドロフによる一般化があります。
定義はやや込み入っています。任意の と任意の番号 に対して、 の可算開被覆 と、 より大きい番号の列 が取れて、各 について次が成り立つことをいいます。
一様収束なら、被覆を 1 枚にして番号も 1 つで済みます。だから一様収束は擬一様収束を含みます。
擬一様収束の読み方
一様収束は「1 つの番号が全体で効く」条件でした。擬一様収束は「場所ごとに番号を選び直してよい」条件です。
ただし勝手に選べるわけではありません。与えられた より先の番号から選ぶことと、可算個の領域で全体を覆えることが要求されます。
各点収束は「点ごとに番号を選び直してよい」条件です。選び直しの単位が、点なのか領域なのか全体なのか。3 つの条件はこの粗さで並んでいます。
<svg viewBox="0 0 460 200" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<rect x="60" y="66" width="340" height="24" rx="2" fill="none" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.5"></rect>
<rect x="60" y="130" width="85" height="24" rx="2" fill="none" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5"></rect>
<rect x="145" y="130" width="85" height="24" rx="2" fill="none" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5"></rect>
<rect x="230" y="130" width="85" height="24" rx="2" fill="none" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5"></rect>
<rect x="315" y="130" width="85" height="24" rx="2" fill="none" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5"></rect>
<text x="55" y="26" font-size="11" fill="#1f1f1f">番号を選び直す単位が、条件の強さを決める</text>
<text x="55" y="54" font-size="11" fill="#1b81e0">一様収束:全体を 1 つの番号で押さえる</text>
<text x="212" y="83" font-size="11" fill="#1b81e0">n = 7</text>
<text x="55" y="118" font-size="11" fill="#d0562a">擬一様収束:領域ごとに番号を選び直してよい</text>
<text x="80" y="147" font-size="11" fill="#d0562a">n = 9</text>
<text x="165" y="147" font-size="11" fill="#d0562a">n = 5</text>
<text x="248" y="147" font-size="11" fill="#d0562a">n = 20</text>
<text x="335" y="147" font-size="11" fill="#d0562a">n = 12</text>
<text x="55" y="186" font-size="11" fill="#9a9a9a">どちらも、与えられた番号より先から選ぶ</text>
</svg>計算例:擬一様収束もしていないこと
上の に戻ります。極限が不連続でした。
アルツェラの定理の対偶から、この列は擬一様収束もしていないと分かります。一様収束より弱い条件すら満たしていません。
逆に に制限した場合は、極限が連続なので擬一様収束はしています。一様収束はしていないので、2 つの条件の差がこの例に出ています。
十分条件。極限の連続性を保証するが、連続な極限を持つ列がすべて一様収束するわけではない
必要十分条件。連続な極限を持つことと同値だが、条件の形が込み入っていて確かめにくい
実際に使うのはほとんど一様収束のほうです。確かめやすさと強さの釣り合いが取れているからです。
連続性は保たれても微分可能性は保たれない
同じ問いを微分について立てると、答えが変わります。
は に一様収束します。各項は何回でも微分できます。
ところが項別に微分した は、 で のままです。導関数の列は に収束しません。
値の近さは傾きの近さを含みません。微分について同じ結論を得るには、導関数の列のほうに一様収束を仮定する必要があります。
積分は保たれる
有限区間の上でなら、積分は連続性と同じように保たれます。
上で が積分可能で に一様収束するなら、 も積分可能で、積分は極限と交換します。
証明は という 1 行です。区間の長さが有限であることを使っています。
一様収束は連続性と積分を保ちますが、微分は保ちません。値の近さと傾きの近さが別の話だからです。
上限ノルムで測っているのは値の差だけで、導関数の差については何も言っていない。











各点収束でも番号は取れますが、点ごとに変わります。近傍を決めるには先に番号を固定する必要があるので、x に依らない N が要ります。