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シンプソン則はなぜ 3 次まで当たるのか?台形則と誤差を比べる

です。区間を 等分し、同じ 個の値だけを使って近似すると、台形則が 、シンプソン則が になります。

真の値は 。使った情報は同じなのに、誤差が 倍以上ちがう。

差は重みの付け方だけです。台形則は両端を半分にして足し、シンプソン則は の比で足します。

台形則

区間を 等分し、隣り合う 点を直線で結びます。 区間ぶんの面積が台形になる。

これを全部足すと、内側の点は つの台形に共有されるので係数が 、両端だけが になります[3]

です。 に制限はありません。

シンプソン則

区間をひと組にして、 点を通る放物線で近似します。直線ではなく 次曲線を当てる形です[2]

区間で 組なので、 は偶数に限られます。奇数を渡すと組が余って式が成り立ちません。

係数は端が 、奇数番目が 、偶数番目が が交互に並ぶところをとり違えやすい。

図の関数では、台形則の誤差が 、シンプソン則が 。放物線のほうが曲線に寄り添っています。

問題 1:台形則で計算する

の台形則で近似せよ。

解答 1

で、 点をとります。値は です。

両端を半分にして足します。

真の値は なので、誤差は 。上から近づいています。

問題 2:シンプソン則で計算する

同じ のシンプソン則で近似せよ。

解答 2

点は問題 と同じです。重みだけが に変わります。

誤差は 。台形則の 分の ほどになりました。同じ 点で、この差が出ます。

重みの和で確かめる

重みを足すと になります。 が定数関数のとき、近似が厳密に一致するということです。

シンプソン則で なら

一般の偶数 でも同じです。 個、 個、 個なので、合計は になります。

計算を始める前に、この和が合うかを見ておく。重みを写し違えていれば、ここで止まります。

誤差の式

誤差には閉じた形があります。台形則は 階微分、シンプソン則は 階微分で決まります[1]

は区間のどこかにある点で、場所は分かりません。分かるのは、 の最大値で押さえられることだけです[3]

の冪が です。分割を 倍に細かくすると、台形則の誤差は 、シンプソン則は になる。

canvas: 置き場が受け取りませんでした

倍にするたびに、シンプソン則の棒は 段階ぶん一気に縮みます。この差が、必要な分割数の差になって出てきます。

問題 3:台形則の誤差を押さえる

の台形則で近似したときの誤差を、上から押さえよ。

解答 3

なので です。 での最大値は での

を入れます。

問題 の実際の誤差は でした。押さえの内側に収まっています。

最大値をとる点は の位置とは限りません。だから式が与えるのは上限だけで、誤差そのものではない。

問題 4:分割数を決める

を台形則で、誤差 未満にしたい。 をいくつにとればよいか。

解答 4

を誤差の式に入れます。

から 。整数にとって です。

ではなく について解くところが手順の要になります[4]

問題 5:シンプソン則で分割数を決める

同じ積分をシンプソン則で、誤差 未満にしたい。 をいくつにとればよいか。

解答 5

で、 での最大値は です。

なので です。

偶数に限られるので 。台形則で を狙うと となり、 点ぶんの計算が要ります。

台形則

誤差 分割。分割を 倍にして誤差が

シンプソン則

誤差 分割。分割を 倍にして誤差が

なぜ 3 次まで当たるのか

シンプソン則は放物線を当てているので、 次関数までは厳密です。ところが 次関数でも厳密になります[2]

区間を にとって を入れると分かります。真の値は奇関数なので

近似のほうは で、こちらも です。

次の項は中点をはさんで打ち消し合う。 という左右対称の重みが、その打ち消しをそのまま拾っています。

誤差の式に 階微分が現れるのも同じ話です。 次以下なら f の 4 階微分が 0 になります。

誤差の式が を返すので、厳密に一致する。代数的精度が であることの言いかえ。

問題 6:3 次関数で確かめる

のシンプソン則で計算し、真の値と比べよ。

解答 6

で、値は です。

真の値も で、完全に一致しました。分割を つしかとっていないのに誤差が になります。

問題 7:4 次関数だと外れる

のシンプソン則で計算し、誤差を誤差の式と比べよ。

解答 7

値は です。

真の値は なので、誤差は になります。

誤差の式のほうも見ます。 で定数なので、 を選ぶ余地がありません。

数値がぴたりと合いました。 階微分が定数のときは、誤差の式が上限ではなく誤差そのものを返します。

問題 8:誤差の式が使えない場合

を台形則で近似すると、誤差はどう落ちるか。

解答 8

で発散します。最大値がとれないので、誤差の式に入れる値がありません。

実際に計算します。。真の値は です。

誤差は で、比は なら になるはずのところです。

より遅く落ちています。端点で導関数が発散する関数では、分割を細かくしても の速さは出ません。

置換 に直せば、なめらかな関数になって速さが戻ります。

シンプソン則で を指定するとどうなりますか。

  • 誤差が より悪くなる
  • 式が組めない
  • 台形則と同じ値になる
__RESULT__

区間で 組の放物線を当てるので、 は偶数に限られます。 では組が つ余り、重みを の形に並べられません。

整理

つの式のちがいを、 か所にまとめます。

項目台形則シンプソン則
当てる曲線直線放物線
厳密な次数1 次まで3 次まで
誤差の次数h の 2 乗h の 4 乗

分割数の制限はシンプソン則だけにあります。偶数でなければ組が余る。

なめらかな関数ならシンプソン則が圧倒的に有利で、導関数が端で暴れる関数では、どちらも誤差の式が効かなくなります。

重みの和が b - a になるかを先に確かめる。
シンプソン則では n を偶数にとる。
誤差の式は上限であって、誤差そのものではない。
導関数が有界かどうかを、式に入れる前に見る。

重みを並べて、微分の最大値を押さえて、 について解く。数値積分の計算はこの 手で終わります。

参考文献

Quadrature. NIST Digital Library of Mathematical Functions, National Institute of Standards and Technology.
Simpson formula. Encyclopedia of Mathematics.
Trapezium formula. Encyclopedia of Mathematics.
Fehlerabschätzungen. Lernmodul Numerische Integration, Universität Göttingen.
同じ $5$ 点から円周率の積分を出すと、台形則が $3.13118$、シンプソン則が $3.141569$。差は重みの付け方だけです。誤差は $h$ の $2$ 乗と $4$ 乗で落ちるので、分割を $2$ 倍にしたときの縮み方が $4$ 分の $1$ と $16$ 分の $1$ に分かれる。$\log 2$ を誤差 $10^{-6}$ で出すには $409$ 分割と $20$ 分割が要ります。放物線を当てているのに $3$ 次まで厳密になる理由、$4$ 階微分が定数なら誤差の式が上限ではなく誤差そのものを返すこと、端で導関数が発散して $h^2$ の速さが出ない例まで。