穴の数と向きづけだけで閉曲面は決まる(分類定理と基本多角形)
閉じた曲面は、たった つの情報で決まります。オイラー標数と、向きづけできるかどうか[3]。
この つが一致すれば同相です。曲面がどれだけ複雑に曲がっていても、位相の目には穴の数しか映りません。

以下では分類の主張から始め、基本多角形と辺の語、連結和、そして境界がある場合まで扱います。
主張
つの族は互いに重なりません。どの曲面がどれに入るかは、標数と向きづけの つで読めます。
向きづけ可能な側は標数が偶数、できない側は偶数も奇数もとります。
例: 標数と向きづけで表を作る
標数を大きいほうから並べます。 は球面、 は射影平面。
は つあります。向きづけ可能ならトーラス、できないならクラインの壺です。
は射影平面 つの連結和、 は種数 の曲面か射影平面 つの連結和。
同じ標数でも向きづけの有無で分かれる、という構図がくり返されます。標数だけでは足りません。
基本多角形
分類を証明する道具が多角形です。曲面を三角形分割し、切り開いて 枚の多角形に平らに広げます。
辺は 本ずつ組になって貼り合わされます。多角形の周を 周し、辺の名前を順に読んだものを辺の語といいます[2]。
同じ文字が 回現れ、向きがそろっていれば と 、逆向きなら と と書きます。
例: 4 つの標準形
代表的な曲面の辺の語を並べます[2]。
球面は とも書けます。 角形の 辺を貼り合わせた形です。
トーラスとクラインの壺は、 文字の指数だけが違います。 か かで、向きづけできるかどうかが分かれる。
射影平面は とも書けます。円板の縁を対蹠点どうし貼った形と同じです。
例: 種数 g の標準形
向きづけ可能な種数 の曲面は、 角形から作れます[2]。
交換子を 個並べた語です。 でトーラスの語に戻ります。
向きづけできない側は、もっと短く書けます。 角形で 個の文字を 度ずつ並べる。
で射影平面、 でクラインの壺です。
連結和
つの曲面から円板を つずつ抜き、できた境界の円を貼り合わせる操作を連結和といいます[4]。
標数は素直に足し算になります。円板 枚が消え、円 本が加わるためです。
球面は単位元です。 で、抜いて貼り直しても形が変わりません[4]。
例: 標数を足してみる
トーラス つの連結和を計算します。 なので、。
種数 の曲面の標数 と合っています。連結和が穴を つ増やす操作だと分かります。
射影平面 つなら 、さらに です。公式の と一致します。
例: 射影平面 2 つはクラインの壺
を調べます。標数は 。
向きづけできない曲面どうしの和なので、結果も向きづけできません。標数 で向きづけ不可能な閉曲面はクラインの壺だけです。
多角形の側でも見えます。射影平面 つの語 が、辺の張り替えでクラインの壺の語に直せます。
クラインの壺を、 つのメビウスの帯を縁で貼ったものと見る図が対応します。
例: ディックの定理
向きづけできない曲面に、さらに穴を足すとどうなるか。
左辺の標数は 、右辺も です。どちらも向きづけできません。
分類定理から、標数と向きづけが一致すれば同相。よって等しくなります[1]。
向きづけできない曲面がすでにあると、ハンドルを つ付けることと交叉帽を つ足すことが同じになる。 つの族に重なりがない理由も、この関係が支えています。
種数の意味
向きづけ可能な曲面では、 を種数といいます。ハンドルの本数、あるいは穴の個数です。
次ホモロジーの階数が になります。ハンドル 本につき、まわりを回る道と通り抜ける道が 本ずつ増えるためです。
向きづけできない側では を非向きづけ種数といいます。 次ホモロジーは で、ねじれが つ現れる。
証明の筋
証明は 段で進みます[3]。
第 段は三角形分割です。コンパクトな曲面はいつでも三角形に分けられます。分けたら 枚ずつ切り離し、辺で貼り直して 枚の多角形に開きます。
第 段は辺の語の正規化です。同じ文字が隣り合って となっていれば消せます。離れている組は、多角形を対角線で切って貼り直すと隣へ寄せられる。
この操作をくり返すと、語が か の形に落ちます。
第 段は、得られた つの族が互いに異なることの確認です。標数を計算し、向きづけできるかどうかを見れば区別できます。
境界のある曲面
境界を許すと、決めるべき数が つ増えます[1]。
向きづけできるかどうか、種数、そして境界の成分の個数 。この つで同相の型が決まります。
閉曲面から円板を 枚抜いた形です。抜くたびに標数が ずつ減ります。
例: 3 つの数で決まる
円板は , で 。円環は , で です。
メビウスの帯は向きづけできず、, で になります。円環と標数が同じですが、向きづけの有無で分かれる。
ズボンと呼ばれる曲面は , で です。 つの境界円を持つ球面で、曲面を切り分ける単位として使われます。
種数 で境界 の曲面は、ズボンを 枚貼り合わせて作れます。分類定理があるので、貼り方の違いは結果に効きません。











