Krullの標高定理(Hauptidealsatz)

Krull の標高定理(Hauptidealsatz)は、ネーター環における素イデアルの高さに関する基本定理である。単項イデアルを含む極小素イデアルの高さが高々 1 であることを主張し、次元論の出発点となる。

定理の主張

をネーター環、 を非単元かつ非零因子とする。 を含む極小な素イデアル の高さ(height)は高々 1 である。

ここで、素イデアル 高さ とは、 という素イデアルの狭義上昇列の長さ の上限である。

高さ 0 の素イデアル

極小素イデアル。整域では のみ。

高さ 1 の素イデアル

極小素イデアルを真に含む素イデアルで極小なもの。

一般化:Krull の高さ定理

より一般に、 個の元で生成されるイデアルのとき、 を含む極小素イデアル の高さは高々 である。

標高定理は の場合にあたる。この結果は Krull 次元の理論における基礎をなす。

生成元の個数と高さ

個の元で生成されるイデアルを含む極小素イデアルの高さは

等号成立

正則列 で生成されるイデアルでは等号が成り立つことが多い。

証明の概略

標高定理の証明は局所化と帰納法による。 を含む極小素イデアルとし、 と仮定して矛盾を導く。

に局所化し、 を含む極小素イデアルであることを用いる。高さ 2 以上と仮定すると、中間に素イデアル が存在する。 において次元の矛盾が生じ、 が従う。

具体例

において、 を含む素イデアルを考える。 自身は素イデアルで高さ 1。 は高さ 2 だが、 を含む極小素イデアルは 自身なので、標高定理の主張と整合する。

を含む極小素イデアルは であり、いずれも高さ 1。単項イデアルでも因数分解すると複数の極小素イデアルが現れうる。

応用:正則局所環の特徴づけ

正則局所環 の次元 は、 を生成する元の最小個数に等しい。標高定理とその逆が、正則局所環の次元論を支えている。

標高定理から は最小生成元数)が従い、等号成立が正則性の特徴づけの一部となる。

注意

零因子を含む場合、標高定理は修正が必要になる。 が零因子なら を含む極小素イデアルは高さ 0 であることがある。定理の仮定で「非零因子」が重要な役割を果たしている。