射影加群と自由加群

射影加群と自由加群はホモロジー代数の基本的な対象であり、加群の構造を理解する上で重要な役割を果たします。

自由加群の定義

を可換環とします。-加群 が自由であるとは、-加群として

と表せることをいいます。同値な条件として、 が基底をもつこと、すなわち任意の元が基底の元の -線型結合として一意に表せることがあります。

自由加群の例

有限生成自由加群

個の直和)

多項式環

は基底 をもつ自由 -加群

行列環

次元自由 -加群

射影加群の定義

-加群 が射影的であるとは、任意の全射 と準同型 に対し、 となる準同型 が存在することをいいます。

図式で書くと

の持ち上げといいます。

射影加群の特徴づけ

次の条件は同値です。

は射影加群
は自由加群の直和因子( となる自由加群 が存在)
任意の完全列 は分裂する
関手 が完全関手
が任意の で成立

自由加群と射影加群の関係

自由加群

基底をもつ。 と同型。

射影加群

自由加群の直和因子。基底をもつとは限らない。

自由加群は射影加群ですが、逆は一般には成り立ちません。

射影加群が自由になる場合

が局所環なら、有限生成射影加群は自由
が PID(単項イデアル整域)なら、すべての射影加群は自由
は体)なら、有限生成射影加群は自由(Quillen-Suslin の定理)

射影加群の例

において、イデアル は射影加群ですが自由ではありません。 となります。

射影加群と平坦加群の関係

包含関係

自由加群 射影加群 平坦加群

射影加群は平坦加群です。 が射影なら は自由加群 の直和因子であり、 の直和因子として完全性を保ちます。

逆に、有限生成平坦加群は局所環上では自由であり、したがって射影的です。

有限表示加群

射影性と平坦性の差は有限表示のときに縮まります。

有限表示の場合

が有限表示(有限生成かつ関係式も有限生成)のとき

が射影 が平坦