射影加群は自由加群の直和因子として現れる
の上で を加群と見ます。これは射影加群ですが、自由加群ではありません[2]。
元の個数が なので、 とは同型になりません。それでも自由加群の直和因子にはなっている。基底を持たないまま、自由加群の一部として現れます。
自由加群
が自由とは、 のコピーの直和として書けることをいいます。
基底を持つこと、つまりどの元も基底の 線型結合として一意に書けること、と言いかえられます。
、多項式環 、行列のなす加群。どれも基底が目に見える形で並びます。
射影加群
が射影的とは、全射 と写像 に対し、 となる がとれることです[2]。
自由加群は射影的です。基底の行き先を の中で 1 つずつ選べばよく、全射なので選べます[2]。
逆は成り立ちません。冒頭の がその例になります。
同値な言いかえ
直和因子であることの証明は短い。 の生成系から全射 を作ると、射影性からこれが分裂します[2]。
逆に なら、 の持ち上げを作って の成分に落とせばよい。
が消えるという形は、ホモロジー代数で使う顔です。射影分解の出発点になります。
例: の上で
、 とします。 を全射とし、 となる をとる。
の生成する部分加群は と同型になります。 が分裂を与えるので、 は射影的です[2]。
背景は環の分解です。 なので、 は 自身の直和因子。
の上では話が変わります。 は分裂しないので、 は射影的ではありません[2]。
環を分解できるかどうかが効いています。 が連結でないと、自由でない射影加群が現れやすい。
例:デデキント整域のイデアル
、 をとります。これは単項ではありません。
それでも は射影加群です。デデキント整域では、 でないイデアルがすべて可逆で、したがって射影的になります。
さらに が成り立ちます。 という関係を使うと、次が出ます。
自身は自由でないのに、2 つ重ねると自由になる。階数が の射影加群が自由でない、という現象がここに出ています。
は連結なので、前の例とは事情が違います。連結でも自由でない射影加群が作れる、という例になっている。
有限生成なら局所自由
有限生成の射影加群には、幾何的な言いかえがあります[1,3]。
これらはすべて同値です[1]。有限生成射影加群とは、各点の近くで自由な加群のこと。
大域で自由になるとは限りません。局所的に自由でも、貼り合わせでねじれが入ることがあります[3]。
幾何ではベクトル束にあたります。 は、ねじれた束を 2 つ重ねるとねじれが打ち消える、という現象です。

自由になる場合
条件を足すと、射影加群が自由になります。
局所環の上では、有限生成射影加群がつねに自由です[4]。剰余体で数えた次元だけの基底がとれる。
単項イデアル整域の上でも、射影加群は自由になります。有限生成でなくても成り立つ強い結果です。
体上の多項式環 では、有限生成射影加群が自由になります。Quillen と Suslin が 1976 年に示したものです[4]。
基底がある。どの元も一意に表せる
自由加群の直和因子。基底がないこともある
無限生成でも手がかりはあります。Kaplansky の定理により、射影加群は可算生成な射影加群の直和に分かれます[4]。
平坦加群との関係
包含関係は次のとおりです。
射影加群が平坦であることは、直和因子であることから出ます。自由加群とテンソルすると完全性が保たれ、その直和因子も保つ。
逆向きは一般に成り立ちません。 は 上平坦ですが射影的ではない。
有限表示という条件を足すと、平坦と射影が一致します[1]。差が出るのは無限生成の側だけです。
有限表示のもとで平坦と射影が一致するのは、局所自由という共通の言いかえに落ちるためです。
平坦性も射影性も、点ごとに見れば自由であることを意味します。差は大域の有限性の扱いから来ます。
階数
が連結なら、有限生成射影加群の階数は一定です。各点での局所化の階数がそろう。
連結でないと階数が変わります。 で をとると、片方の点で階数 、もう片方で 。
この は の直和因子なので射影的です。それでも自由ではありません。階数がそろわないため。
階数が一定でも自由とは限らないのは、 の例が示すとおりです。
上の加群のうち、射影的なものはどれですか。
まちがえやすい点
基底がなくても、自由加群の一部として置ける。この一歩ゆるめた条件が、ホモロジー代数とベクトル束の両方を支えています。













Z 上の射影加群は自由加群に限られます。Q は平坦ですが自由ではなく、Z/3Z はねじれを持つので自由になりません。