正規環の定義と性質

正規環は整閉性を一般化した概念であり、代数幾何学において「よい特異点」をもつ多様体に対応する。局所的な整閉性条件として定義され、因子理論と密接に関係する。

定義

可換環 正規(normal)であるとは、 が被約であり、各局所化 は素イデアル)が整閉整域であることをいう。

が整域の場合、正規であることと整閉であること( がその商体の中で整閉)は同値になる。一般の場合は局所的な条件として定式化される。

整閉整域

整域で、商体における整元がすべて元の環に属する。

正規環

被約で、各局所化が整閉整域。整閉性の局所的版。

Serre の条件

正規性は次の Serre の条件で特徴づけられる。ネーター環 が正規であることと、 かつ を満たすことは同値だ。

条件 R₁

高さ 1 の素イデアル に対し、 は正則局所環(つまり離散付値環)。

条件 S₂

高さ 2 以上の素イデアル に対し、

具体例

多項式環 は正規である。 が完全体なら、 は整閉な UFD(一意分解整域)であり、特に正規だ。

は正規ではない。この環は尖点をもつ曲線に対応し、原点で整閉性が破れる。実際、商体に をとると となり、 上整だが に属さない。

一方、)は正規である。滑らかな楕円曲線に対応し、特異点がないためだ。

正規化

任意の被約ネーター環 に対し、その正規化(normalization) が存在する。 を含む最小の正規環であり、 の全商環における整閉包として構成される。

が整域なら、 の商体における の整閉包である。 がネーター環なら 上有限生成加群となる。

幾何学的意味

代数幾何学において、正規性は「余次元 1 の特異点がない」ことに対応する。 条件が余次元 1 での正則性を、 条件が代数的な「連結性」を保証している。

正規でない多様体の正規化は、特異点を「解消」する操作の一つである。ただし、正規化は完全な特異点解消ではなく、余次元 2 以上の特異点は残りうる。

Weil 因子と Cartier 因子

正規環上では Weil 因子の理論が展開できる。高さ 1 の素イデアルが離散付値に対応し、因子の理論が自然に定式化される。

正規環で Cartier 因子(局所的に単項イデアルで定義される因子)と Weil 因子が一致するのは、環が UFD のときに限られる。この差異は因子類群の構造に反映される。