正規環は「余次元 1 まで滑らか」を意味する
環 が正規であるとは、どの素イデアル についても局所化 が整閉整域になることをいいます[3]。
整域の場合は、分数体の中で整閉であることと同じです[3]。整域でない環まで含めるために、局所化の言葉で書き直したかたち。
幾何では「余次元 までは滑らか」という条件にあたる[2]。特異点を全部追い出すのではなく、細いところだけ掃除する。
整域なら整閉と同じ
整域 が正規であることと、 が分数体の中で整閉であることは同値です[3]。整閉性は局所化で保たれ、局所化を全部集めればもとの環に戻るためです。
も も正規です。一意分解整域はつねに整閉なので、そこから従う[5]。
正則局所環も正規になる。正則なら一意分解整域だからです。
被約であること
正規環はつねに被約です[3]。冪零元があれば、それを含む局所化が整域でなくなる。
は正規ではありません。 なのに なので、整域から外れる。
ネーターな正規環は、有限個の整閉整域の直積に分かれます[1,3]。連結成分ごとに整域が並ぶ、という形です。
尖った点は正規でない
を見ます。 が定める曲線で、原点が尖点になる[2]。
分数体で と置くと、 が成り立つ。 は の根なので 上整です。
それなのに は に入りません。整閉性が破れているので、 は正規ではない。
を添加すると になる。、 と書けるので、多項式環がそのまま出てくる。
点の対応は一対一です。それでも逆写像は多項式で書けません。 は原点で分母が になる。
有限で双有理なのに同型でない射がある、という状況になる[2]。正規でない環の見分け方の一つです。
節点でも同じことが起きる
が定める節点曲線も正規ではありません[2]。原点で 本の枝が交わる。
と置くと が成り立ち、 は環の上で整になる。やはり環の中には入りません。
正規化すると枝がほどける。交点で分かれていた 本が、別々の点に持ち上がる。
セールの判定法
ネーター環が正規であることは、 つの条件に分解できます[1]。
この つがそろうことと、正規であることが同値になる[1]。整域の場合はクルル、一般の場合はセールによる結果です[1]。
が「細いところに特異点がない」を、 が「余分な成分がくっついていない」を担当する。
条件は一般化できます[1]。 は高さ 以下で正則、 は深さが 以上、という形です。
被約であることは と に対応する[1]。コーエン・マコーレー性はすべての で が成り立つことにあたります[1]。
深さは最長の正則列の長さで測る[6]。
余次元 1 と余次元 2
正規多様体の特異点は、余次元 以上にしか現れません[2]。
曲線には余次元 の場所がありません。だから正規な曲線はすべて正則になる[2]。
尖点も節点も曲線なので、正規でないという判定と特異点があるという判定が一致しました。次元が 以上になると事情が変わる。
例: 正規なのに特異点がある
を見ます。原点で滑らかでない曲面になる。
特異点は原点だけで、これは余次元 にあたります。余次元 の場所には特異点がないので、 は通る。
超曲面なので深さの条件 も満たします。セールの判定法から、この環は正規だと分かります[1]。
正規性が滑らかさより弱い条件だということを、この例がはっきり示しています。
正規化
被約なスキームには、正規化がただ一つ定まります[2]。もとの図形へ整で双有理な射を持つ、正規な図形です。
環の言葉では、全商環の中で整閉包をとる操作にあたる[3]。整域なら分数体の中の整閉包です[5]。
尖点の正規化が でした。節点では枝が分かれ、既約でない図形なら成分ごとに分離される[2]。
正規化は特異点解消ではありません[2]。余次元 以上の特異点は残る。
有限双有理射で特徴づける
正規性には、射の言葉による言いかえがある[2]。 が正規であることと、 への有限で双有理な射がすべて同型であることは同値です。
尖点では が有限双有理なのに同型ではありませんでした。この射の存在が、正規でないことの証拠になる。
「これ以上ほどけない」という状態が正規性だ、と読めます。
保たれる操作
正規性は多くの操作で保たれる。
いずれも Stacks Project に補題として並んでいます[3]。正規環は全商環の中で整閉になる、という言いかえも同じ節にある[3]。
ヴェイユ因子とカルティエ因子
正規な図形の上では、因子の理論が素直に立つ。余次元 の既約閉部分集合を形式的に足し合わせたものがヴェイユ因子です[4]。
局所的に 本の式で書ける因子をカルティエ因子と呼ぶ[4]。カルティエならヴェイユですが、逆は一般に成り立ちません。
つが一致するのは、局所的に一意分解整域であるときです[4]。正則な図形はこの条件を満たす[4]。
因子類群と一意分解
ヴェイユ因子を主因子で割った群が因子類群 です[4]。
ネーターな正規整域では、次が同値になります[4]。
因子類群が、一意分解からのずれを測る量になっている。正規性は、この測定が意味を持つための前提です。










