Z/15Z の元は、3 で割った余りと 5 で割った余りの組で決まります。15 通りが 3×5 の表にちょうど並ぶ。
Z/15Z≅Z/3Z×Z/5Z
これを可換環とイデアルの言葉に置きかえたものが、中国剰余定理です。
整数のとき
m と n が互いに素なら、次の連立合同式の解が mn を法として 1 つに決まります。
x≡a(modm),x≡b(modn)
写像で書き直すと、xmodmn↦(xmodm, xmodn) が環の同型になるという主張です。
Z/mnZ⟶Z/mZ×Z/nZ
gcd(m,n)=1 を外すと崩れる。この条件をイデアルの言葉へ移すところから始めます。
イデアルが互いに素とは
R を可換環、I、J をイデアルとします。互いに素とは、和が環全体になることです[3]。
I+J=R
a∈I、b∈J で a+b=1 と書ける、と言いかえられる。1 が書けるかどうかだけを見ている。
Z では (m)+(n)=(gcd(m,n)) となり、(m)+(n)=Z と gcd(m,n)=1 が同じ条件になります。イデアルの互いに素は、整数のそれをそのまま広げたもの。
最大公約数を持ち出さずに、和が全体かどうかだけで書ける。
主張
イデアル I1,…,In に対して、次の準同型を考えます[1]。
f:R⟶R/I1×⋯×R/In,r⟼(r+I1,…,r+In)
単射と全射が、それぞれ別の条件で決まる[1]。
I1∩⋯∩In=(0)。核がちょうど交わりになるため。
I1,…,In が 2 つずつ互いに素。i=j でいつも Ii+Ij=R。
2 つずつ互いに素なら、交わりと積も一致します[2]。
I1∩⋯∩In=I1⋯In
n=2 で書き下すと、I+J=R のとき次の同型になる。
R/(I∩J)≅R/I×R/J
全射になるのは互いに素なときだけ
先に、互いに素なら全射になることを見る。i=1 について ai+bi=1(ai∈I1、bi∈Ii)をとり、b(1)=b2⋯bn と置きます[3]。
bi=1−ai は I1 を法として 1 になり、積の b(1) も I1 を法として 1 になる。一方 b(1) は I2,…,In のどれにも入る。
つまり f(b(1))=(1,0,…,0)。添え字をずらせば b(i) が同じようにとれて、f(b(i)) が i 番目だけ 1 になる。
あとは足し合わせるだけ。任意の (r1,…,rn) に対して次のように置けば足ります。
x=r1b(1)+⋯+rnb(n)
逆向きも短く済む。f が全射なら (1,0,…,0) へ移る x があります[1]。
x≡1(modI1) から 1−x∈I1、x≡0(modI2) から x∈I2 が言える。
1=(1−x)+x∈I1+I2
だから I1+I2=R。添え字を替えれば、どの 2 つについても同じことが言える。
核と、交わりが積になること
核は定義からすぐ分かります。f(r)=0 とは、r がどの Ii にも入ることだからです[2]。
kerf=I1∩⋯∩In
準同型定理をあてると、全射のときに R/(I1∩⋯∩In) と直積が同型になる。
交わりが積に一致することも見ておきます。n=2 で示せば、あとは帰納法です[3]。
IJ⊆I∩J はいつでも成り立つ。逆は a+b=1 を使う。x∈I∩J を次のように割ります。
x=xa+xb
x∈J と a∈I から xa∈IJ、x∈I と b∈J から xb∈IJ。だから x∈IJ になる。
例:Z/15Z
I=(3)、J=(5) とすると I+J=Z で、互いに素です。3×5 の表の各ますに、0 から 14 がちょうど 1 つずつ入る。
同型写像は xmod15↦(xmod3, xmod5) です。
| xmod15 | xmod3 | xmod5 | | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 2 | 2 |
| 4 | 1 | 4 |
| 7 | 1 | 2 |
| 11 | 2 | 1 |
逆向きに組み立てる
表を引かずに x を求める手順も、証明がそのまま与えます。3 で割って 1、5 で割って 3 になる x を探す。
a=6∈(3)、b=−5∈(5) をとると a+b=1。この 2 つが目印になる。
| b=−5 | 3 で割ると 1、5 で割ると 0 |
| a=6 | 3 で割ると 0、5 で割ると 1 |
欲しい余りを係数にして足すだけです。
x=1⋅b+3⋅a=−5+18=13
13 を 3 で割ると 1、5 で割ると 3。欲しかった組になっています。
余りの組を替えても、a と b は使い回せる。係数だけ差しかえればよい。
互いに素でないと崩れる
Z/4Z を Z/2Z×Z/2Z へ分けようとすると、うまくいきません。(2)+(2)=(2)=Z だからです。
写像の両方の成分が同じ xmod2 になるため、像は対角線の 2 ますだけ。残りの 2 ますに移る元がありません。
多項式でも同じ。(x)+(x2)=(x)=k[x] だから、k[x]/(x3) は k[x]/(x)×k[x]/(x2) と同型になりません。
k[x]/(x3) は極大イデアルを 1 つしか持たない局所環で、直積のほうは 2 つ持つ。数が合わない。
冪でも互いに素のまま
I+J=R なら、どの正の整数 m、n についても Im+Jn=R です。
a+b=1 を m+n 乗して展開する。
1=(a+b)m+n=k=0∑m+n(km+n)akbm+n−k
k≥m の項は ak∈Im に入ります。k<m の項は m+n−k>n となり、bm+n−k∈Jn に入る。
右辺のどの項も Im+Jn に属し、1∈Im+Jn が言えます。これと中国剰余定理を合わせると、次の同型になる。
R/(Im∩Jn)≅R/Im×R/Jn
整数へ戻すと、gcd(m,n)=1 のときの Z/manbZ≅Z/maZ×Z/nbZ にあたる。素因数分解ごとに分けられるという話です。
単元群も分かれる
同型は単元を単元へ写すため、単元群もそのまま分かれる。
(R/(I∩J))×≅(R/I)××(R/J)×
Z にあてはめると、オイラー関数が積に分かれるという式になる。
φ(mn)=φ(m)φ(n)(gcd(m,n)=1)
φ(15)=φ(3)φ(5)=2×4=8。15 未満で 15 と互いに素な数を数えると、1,2,4,7,8,11,13,14 の 8 個で合っています。
Spec では 2 つに分かれる
I+J=R なら V(I)∩V(J)=V(I+J)=∅ です。V(IJ)=V(I)∪V(J) だから、Spec(R/IJ) は交わらない 2 つの閉集合に分かれる。
直積環のスペクトルは非交和になる。環が分解することと、空間が離れることが同じ内容になっている。
幾何の側から読み直すこともできます[1]。多様体 X の部分多様体 Y1,…,Yn への制限写像を見ると、単射になるのは Yi が X を覆うとき、全射になるのは Yi がたがいに交わらないとき。
Z/12Z と同型になるのはどれですか。
- Z/2Z×Z/6Z
- Z/3Z×Z/4Z
- Z/2Z×Z/2Z×Z/3Z
__RESULT__
12=3×4 で gcd(3,4)=1 だから、(3) と (4) は互いに素です。2 と 6 は互いに素ではないので使えません。3 つに分ける形は (2) と (2) のところで崩れ、Z/2×Z/2 が巡回群にならないぶん Z/12 と食い違います。
I+J=R のとき、I2+J3 はどうなりますか。
- R になる
- I+J より真に小さくなる
- 一般には決まらない
__RESULT__
a+b=1 を 5 乗して展開すると、a の次数が 2 以上の項は I2 に入り、2 未満の項は b の次数が 4 以上になって J3 に入ります。どの項も I2+J3 に属するので 1∈I2+J3 です。
イデアルの和が全体になるかどうか、それだけが分解の可否を決めます。整数の互いに素も、多項式の共通根がないことも、Spec の閉集合が交わらないことも、I+J=R の言いかえです。
参考
Andreas Gathmann, *Commutative Algebra*, RPTU Kaiserslautern-Landau. Damian Rössler, *Commutative Algebra*, University of Oxford. Nicolas Perrin, *Algèbre commutative*, Université de Versailles Saint-Quentin.
$\mathbb{Z}/15\mathbb{Z}$ の元は、$3$ で割った余りと $5$ で割った余りの組で決まります。イデアルの言葉に直すと、$I + J = R$ のとき $R/(I \cap J) \cong R/I \times R/J$。準同型が単射になるのは交わりが $(0)$ のとき、全射になるのは 2 つずつ互いに素なときで、逆も成り立つ。$a + b = 1$ の $a$ と $b$ を目印にすれば、連立合同式の解は係数を替えるだけで組み立てられます。$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ が $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ に分かれない理由、冪をとっても互いに素のままであること、オイラー関数が積に分かれること、$\mathrm{Spec}$ が 2 つの閉集合に離れることまで。
12=3×4 で gcd(3,4)=1 だから、(3) と (4) は互いに素です。2 と 6 は互いに素ではないので使えません。3 つに分ける形は (2) と (2) のところで崩れ、Z/2×Z/2 が巡回群にならないぶん Z/12 と食い違います。