有限生成加群の基本性質

有限生成加群は可換環論における中心的な対象である。ベクトル空間が体上の有限次元性をもつのと同様に、環上の加群にも「有限生成」という基本的な有限性条件がある。

定義

を可換環、-加群とする。有限生成(finitely generated)であるとは、有限個の元 が存在して

となることをいう。このとき の生成系と呼ぶ。

有限生成加群は、全射 が存在する加群と言い換えてもよい。

有限生成加群

有限個の元で生成される。 からの全射が存在。

自由加群

と同型。有限生成自由加群は有限生成加群の特別な場合。

基本性質

有限生成加群は部分加群や商加群に関してよい振る舞いをする。

が有限生成 -加群で、 が部分加群のとき、商加群 も有限生成である。 の生成元の像が を生成するからだ。

一方、部分加群が有限生成とは限らない。たとえば (無限変数多項式環)は 1 で生成される有限生成 -加群だが、イデアル は有限生成でない。

ネーター環上では状況が改善

がネーター環ならば、有限生成 -加群の部分加群もすべて有限生成。

ネーター加群

部分加群がすべて有限生成である加群をネーター加群という。

短完全列との関係

短完全列

において、 がともに有限生成ならば も有限生成である。 の生成元と、 の生成元の での持ち上げを合わせれば の生成系が得られるためだ。

逆に が有限生成ならば は有限生成だが、 は必ずしも有限生成でない。これは先述の反例と同じ構造である。

テンソル積と有限生成性

がともに有限生成 -加群ならば、テンソル積 も有限生成である。 の生成元 の生成元 に対し、 を生成する。

有限生成性はスカラー拡大でも保たれる。 を環準同型とし、 が有限生成 -加群ならば、 は有限生成 -加群である。

局所化との関係

を積閉集合、 を有限生成 -加群とする。このとき は有限生成 -加群である。 の生成元の像が を生成するからだ。

局所環 上の有限生成加群に対しては中山の補題が適用でき、最小生成元数が で計算できる。