完全交叉環

完全交叉環は、正則局所環を「正則列で割った」形で得られる環である。Cohen-Macaulay 環の特別な場合であり、ホモロジー的によい性質をもつ。

定義

局所環 完全交叉(complete intersection)であるとは、ある正則局所環 -正則列 が存在して

となることをいう。このとき が成り立つ。

正則局所環

最も「よい」局所環。射影次元が有限。

完全交叉環

正則局所環を正則列で割ったもの。Cohen-Macaulay かつホモロジー的によい。

基本性質

完全交叉環は Cohen-Macaulay 環である。正則列で割る操作は深さを保つため、 が成り立つ。

さらに、完全交叉環は Gorenstein 環でもある。標準加群が 自身と同型になり、双対性がよい形で成立する。

包含関係

正則 ⊂ 完全交叉 ⊂ Gorenstein ⊂ Cohen-Macaulay

各クラスの特徴

正則は特異点なし、完全交叉は「単純な」特異点、Gorenstein は双対性あり、Cohen-Macaulay は深さ=次元。

は完全交叉である。 は正則で、-正則列(長さ 1)なので、 は完全交叉となる。

は Cohen-Macaulay だが完全交叉ではない。 は 2 元で生成されるが、-正則列ではないためだ。

幾何学的意味

代数幾何学において、完全交叉は「余次元に等しい個数の方程式で定義される」多様体に対応する。アフィン空間 の中で 個の方程式で定義される 次元多様体が完全交叉だ。

たとえば、3 次元空間内の 2 本の曲面の交わりとして定まる曲線は完全交叉である。一方、twisted cubic(3 次空間曲線)は完全交叉ではない。

ホモロジー的特徴づけ

完全交叉環は次のホモロジー的条件で特徴づけられる。 を局所環とするとき、 が完全交叉であることと

が成り立つことは同値である。この条件は Koszul 複体の構造から来ている。

特異点解消との関係

完全交叉特異点は、特異点理論において比較的扱いやすい。孤立特異点の場合、Milnor ファイバーやモノドロミーの理論が展開でき、位相的不変量が計算しやすい。

正則でない完全交叉環は特異点をもつが、その特異点は「単純」であり、解析的にも代数的にもよい性質をもつことが多い。