Artin環の定義と性質

Artin 環とは、イデアルの降鎖条件(DCC)を満たす環のことである。ネーター環が昇鎖条件(ACC)を満たすのに対し、Artin 環はその双対概念といえる。

定義

Artin 環(Artinian ring)であるとは、 のイデアルの任意の降鎖

が有限回で停止することをいう。同様に、-加群 Artin 加群 であるとは、部分加群の降鎖条件を満たすことをいう。

ネーター環

イデアルの昇鎖条件(ACC)を満たす。「有限生成性」と関係が深い。

Artin 環

イデアルの降鎖条件(DCC)を満たす。「有限長」と関係が深い。

Artin 環の基本性質

Artin 環には強い構造定理が成り立つ。まず、可換 Artin 環はネーター環でもある。これは一般の環では成り立たない重要な事実だ。

可換 Artin 環 について、次が成立する。

素イデアルは極大イデアル

Artin 環では素イデアルと極大イデアルが一致する。つまり Krull 次元は 0 である。

極大イデアルは有限個

Artin 環の極大イデアルの個数は有限であり、それらの積がニルラジカルに等しい。

構造定理

可換 Artin 環の構造は完全に決定される。 を可換 Artin 環、 をその極大イデアルとすると、中国剰余定理により

と分解できる。各 は Artin 局所環であり、極大イデアルの冪がゼロになる。

Artin 局所環 では、ある正整数 が存在して となる。このことから、Artin 局所環の元は単元かニルポテントのいずれかであることがわかる。

は Artin 環の最も単純な例である。イデアルは しかないため、降鎖条件は自明に満たされる。

も Artin 局所環の典型例だ。極大イデアルは の像であり、その 乗がゼロになる。一方、 自体は Artin 環ではない。 という無限降鎖が存在するためである。

整数環 もネーター環だが Artin 環ではない。 が無限降鎖を与える。