被約環と既約成分

被約環と既約成分は、環のスペクトルを幾何学的に理解するための基本概念である。被約性はニルポテント元の不在を意味し、既約成分はスペクトルの分解に対応する。

被約環の定義

可換環 被約(reduced)であるとは、ニルポテント元が のみであることをいう。すなわち、 となる が存在するならば である。

のニルラジカル は、すべてのニルポテント元からなるイデアルである。 が被約であることと は同値だ。

被約環

ニルポテント元をもたない。

非被約環

非ゼロのニルポテント元が存在。

被約化

任意の環 に対し、 は被約環となる。これを 被約化(reduction)という。

被約化は のスペクトルを変えない。つまり が位相空間として成り立つ。ニルラジカルは「幾何学的には見えない」のである。

既約成分

位相空間 既約(irreducible)であるとは、 を 2 つの真の閉部分集合の和として書けないことをいう。 の既約閉部分集合は、素イデアル に対する の形をとる。

既約成分(irreducible component)とは、極大な既約閉部分集合のことである。

既約成分と極小素イデアル

の既約成分は、 の極小素イデアル に対する として得られる。

有限性(ネーター環の場合)

がネーター環ならば、 の既約成分は有限個。

整域との関係

が整域であることと、 が既約であることは同値だ。整域では が素イデアルであり、 が既約成分となる。

が被約かつ既約成分が一つなら、 は整域である。一方、被約だが既約でない環もある。たとえば は被約だが、 は 2 つの既約成分をもつ。

具体例

を考える。 だが 自身はニルポテントでないので、 は被約である。 は 2 つの既約成分をもつ。

幾何学的には、 は 2 本の直線 の和集合を定める。各直線が既約成分に対応している。

は非被約である。 はニルポテント()だからだ。 となり、スペクトルは 1 点になる。