形式的滑らかさ
形式的滑らかさは、環準同型の「微分的なよさ」を捉える概念である。代数幾何学における滑らかな射の代数的定式化であり、ケーラー微分と深く関係する。
定義
を環準同型とする。 が 上形式的に滑らか(formally smooth)であるとは、次の持ち上げ性質をもつことをいう。
任意の -代数 と、 のニルポテントなイデアル に対し、図式
を可換にする -代数準同型 が存在する。
直感的には、 から への写像を、 への写像に「持ち上げ」られるという性質だ。
持ち上げが存在する(一意とは限らない)
持ち上げが存在すれば一意
滑らかさの特徴づけ
がネーター環、 が本質的に有限型 -代数のとき、 が 上形式的に滑らかであることと、 が 上滑らか(smooth)であることは同値になる。
滑らかさは次の条件でも特徴づけられる: が 上平坦であり、かつケーラー微分加群 が有限階数の射影 -加群である。
は 上滑らか。 は自由加群。
分離的な有限型拡大(エタール射)は滑らか。 となる。
非分岐性とエタール性
が 上形式的に非分岐(formally unramified)であるとは、上の持ち上げ問題で持ち上げが存在すれば一意であることをいう。これは と同値だ。
が 上形式的にエタール(formally étale)であるとは、形式的に滑らかかつ形式的に非分岐であること、すなわち持ち上げが存在して一意であることをいう。
具体例
を体とし、 を考える。これは尖点をもつ曲線であり、 上滑らかではない。原点において が自由でない(特異点がある)ためだ。
一方、( のとき)は滑らかな楕円曲線を定める。定義多項式の勾配がゼロにならないことが滑らかさを保証している。
微分加群との関係
滑らかさは微分加群 を通じて判定できる。 が 上滑らかであるための必要十分条件は、 が 上平坦で、任意の素イデアル に対し が自由 -加群であることだ。
この条件は「各点で接空間が正しい次元をもつ」という幾何学的直感に対応している。