中山の補題とその応用
中山の補題(Nakayama’s lemma)は可換環論における最も重要な技術的道具の一つである。局所環上の有限生成加群を扱う際に威力を発揮する。
中山の補題
を局所環、 を有限生成 -加群とする。このとき、 ならば である。
より一般に、 を可換環、 を のイデアルで Jacobson 根基に含まれるもの、 を有限生成 -加群とすると、 ならば が成り立つ。
Jacobson 根基
すべての極大イデアルの共通部分。局所環では唯一の極大イデアルに等しい。
有限生成の仮定
この仮定は本質的。有限生成でない加群には適用できない。
証明の概略
が有限生成なので、生成元 をとれる。 より、各 は
と書ける。これを整理すると という形になる。ここで であり、 の行列式は の形をしている。
局所環では の元は単元なので、 は単元となる。したがって は可逆であり、、すなわち各 が従う。
系と応用
中山の補題からいくつかの重要な系が導かれる。
を局所環、 を有限生成 -加群、 を剰余体とする。 は -ベクトル空間であり、その次元は の最小生成元の個数に等しい。
剰余による生成元判定
が を生成する ⇔ それらの像が を -ベクトル空間として生成する
最小生成元の個数
の最小生成元数は に等しい
この系は実用上きわめて便利だ。加群の生成元を調べるには、剰余体上のベクトル空間に「落として」考えればよい。
具体例
( における の局所化)、 とする。 は で生成される自由 -加群だ。 は 1 次元 -ベクトル空間であり、 の最小生成元数が 1 であることと整合する。
一方、 自身(局所環でない)では状況が異なる。 だが、 は で生成される。中山の補題は局所環や Jacobson 根基の条件があって初めて機能する道具なのである。