加群の深さ(depth)
加群の深さ(depth)は、正則列の長さで測られる不変量である。次元と並ぶ重要な概念であり、Cohen-Macaulay 環の定義に本質的な役割を果たす。
定義
を局所環、 を非ゼロ有限生成 -加群とする。 の深さ(depth)とは、 上の -正則列の長さの上限である。
ここで、 が -正則列(-regular sequence)であるとは、各 が 上の非零因子であることをいう。
正則列の最大長。ホモロジー代数的に定義可能。
素イデアル鎖の最大長。幾何学的な「広がり」を測る。
Ext による特徴づけ
深さは Ext 関手を用いて特徴づけられる。 を剰余体とすると
が成り立つ。これは深さがホモロジー代数的な不変量であることを示している。
。すなわち かつ の元がすべて の零因子。
に属する -正則元が存在する。
深さと次元の関係
有限生成加群 に対し、次の不等式が成り立つ。
ここで は加群の次元である。深さは次元を超えない。
Cohen-Macaulay 性
が Cohen-Macaulay 加群であるとは、 が成り立つことをいう。 が Cohen-Macaulay 環であるとは、-加群としての 自身が Cohen-Macaulay であること、すなわち である。
Cohen-Macaulay 環は「ホモロジー的によい」環であり、代数幾何学と可換環論で中心的な役割を果たす。
具体例
(2 変数形式的冪級数環)を考える。 であり、 は -正則列なので 。したがって は Cohen-Macaulay 環である。
は だが、 のどの元も零因子となる( は の、 は の零因子)。したがって であり、Cohen-Macaulay ではない。
Auslander-Buchsbaum の公式
を正則局所環、 を射影次元有限の有限生成 -加群とする。このとき
が成り立つ。ここで は の射影次元である。この公式は深さと射影次元の関係を明確にする。