中学数学623977 views
小学理科720199 views
雑学1473717 views
高校日本史190639 views
高校生物551985 views
教育149564 views
Computer368461 views
世界の国564972 views
小学算数1201030 views
中学社会669002 views
Help
Tools
NewsSpreadsheetCalendarBookkeepingMarkdown TablesLanguage Model NewsLinux CommandsSlidesTier ListPen ToolIllustrationCrayonWatercolorPixel ArtASCII ArtPerspectiveEndless StairsGraphMind MapER DiagramFamily TreeMemeCurved TextImage EditorMosaicRetro FilterPencil SketchSwirl EffectLine ArtOCR/HighlighterMakeup EditorFaviconVideo TrimmerScrolling VideoVideo TitleColor PickerColor ExtractorBonfireFireworksCherry BlossomWater RippleWater SplashBreaking GlassGlass TextureFabric TextureWood GrainMarble TextureBrick Wall TextureMetal TextureWashi Paper TextureCardboard TextureCSS ButtonIcon MakerBar ChartGrouped Bar ChartStacked Bar ChartPie ChartLine ChartArea ChartStacked Area ChartScatter Plot3D Bar Chart3D Pie ChartBar Chart RaceBubble ChartPopulation PyramidPictogramEarningsCandlestick ChartInvestment RiskMortgage SimulatorCalculatorMatrix CalculatorFunction GraphPolynomial ExpansionVenn DiagramField VisualizerRubik's Cube Group TheoryTraveling SalesmanVoronoi and DelaunayFractalUniversity Entrance Exam MathColumn ArithmeticDraw Math FiguresArithmetic AnimationArithmetic Word ProblemsCounting with Tree DiagramsCube NetsRolling DiceCross SectionsMotion PathMechanicsWavesUniversity Entrance Exam Physics解析力学Quantum MechanicsStatistical MechanicsRelativityCelestial MechanicsAstrophysicsCosmologyElectromagnetic WavesCapacitorsLight and LensesThermodynamicsHow Semiconductors WorkMolecular StructuresAtomic OrbitalsElectrochemical CellsChemical EquilibriumCrystal LatticesBuffer pHOrganic Reaction MapPeriodic TableComplex IonsDNA Double HelixCell DivisionMembrane ChannelsNerve ImpulseMuscle ContractionHormones and HomeostasisRock ClassificationWeatherConstellationsSolar and Lunar Eclipses3D ModelingFloor PlanSeismic StructuresIntersection TurnMaglevCooking AnimationOrigamiLive Viewer CountGeoJSON MapRailway MapPopulation MapCrime MapLand Price MapSchool MapShrine and Castle MapHouse of Representatives MapWord MapSolitaireReversiHakoiri MusumeChessHamburgerRippleSlide Puzzle MakerNeon PinballNovel MakerJapanese Typing PracticePiano Score EditorMusic TheoryShogi StrategyPiano Rhythm Game

English

割り算だけがない世界|環と可換環の定義

環は、足し算とかけ算のそろった集合です。整数がその原型で、 も整数の中に戻ってきます。

戻ってこない演算が一つだけある。割り算です。 で割ると が出てしまい、整数からはみ出す。

この「割り算だけがない」状態をそのまま公理に書き下したものが環になります。逆数を全員に配れば体、配らずに済ませれば環。分かれ目はそこだけです。

環の公理

集合 に加法 と乗法 が入っていて、次の 7 つを満たすとき を環と呼びます。乗法の記号は省いて と書く。

加法の結合則。 が成り立つ。
加法の単位元。 を満たす がある。
加法の逆元。どの にも を満たす がある。
加法の可換則。 が成り立つ。
乗法の結合則。 が成り立つ。
乗法の単位元。 を満たす がある。
分配則。 が両方成り立つ。

前半の 4 つは、加法についてアーベル群だと言っている。 だけをとり出して眺めれば、可換な群がそこにある。

続く 2 つは乗法がモノイドだと述べています。逆元は要求しません。ここが群との分かれ目になる。

最後の分配則だけが、加法と乗法という別々の構造を結びつけています[1]。これがなければ、 はただ同じ集合に同居しているだけの他人どうし。

分配則は面積の切り分け

分配則は絵にすると一行で終わる。縦 、横 の長方形を、横 の部分と横 の部分に切り分けるだけ。

切り分けても面積の合計は変わりません。これが の中身のすべてです。

環では左右の分配則を別々に要求する。乗法が可換とは限らないので、片方からもう片方は出てこない。

単位元をどこまで要求するか

乗法の単位元 を公理に入れるかどうかは、教科書ごとに割れています。英語圏の標準的な記述は を要求し、 のないものを rng と呼び分けます[1]

フランス語の文献では、 を持つほうを anneau unitaire、持たないほうを pseudo-anneau と呼びます[3]。ドイツ語では Ring mit Eins と Ring ohne Eins という素直な言い分けをします[2]

のない例はすぐ作れる。偶数全体 は加法・減法・乗法について閉じているのに、 が入っていない。

可換環論では を持つ可換環だけを扱います。極大イデアルの存在をはじめ、 がないと言えなくなる定理が多いため[3]。この記事も を要求する立場で書きます。

零環はなぜ追い出さないか

を認めると、どんな についても となり、 ひとつだけの集合になります。これが零環です[1,2]

つまらない環に見えますが、追い出すと不便が出ます。 自身で割った剰余環がこれなので、除外すると商を作るたび但し書きが要る。

零環は可換環の圏の終対象でもある。すべての環から零環への準同型がちょうど一つ存在する。

ただし整域や体からは外れる。整域の定義には が入っているためです。

例: 整数環

は環の原型です。公理を一つずつ当てても、確かめる手が止まるところがない。

かけ算の逆元だけが足りない。 の逆数 は整数の外にあります。

逆元を持つ元は つだけ。この つが の単元です。

例: 多項式環

係数を環 からとった多項式全体 も環になる。足し算は係数ごと、かけ算は展開して次数ごとに集める。

が可換なら も可換です。 は係数と可換な記号として置いてあるので、順番を入れ替えても値が変わりません。

が整域のとき、 の単元は の単元だけに縮む。次数が 以上の多項式に何を掛けても、次数が足し算で増えて には戻らない。

例: 2 次正方行列

の上の 次正方行列全体 は、可換でない環の代表です[1,4]

順序を入れ替えると結果が変わる。

どちらも零行列ではないのに、同じ行列を 乗すると零行列になる元も入っています。可換性が落ちると、こうした振る舞いが素直に出てくる。

例: 剰余環と零因子

で割った余りの世界 を考えます。 から までの 個が元で、足し算もかけ算も余りをとって定める。

この環には、 でないのに掛け合わせると になる組がある。 がそれで、

を足し続けると 点だけをめぐり、 個の目盛りを埋めません。 が公約数を持つことが、そのまま零因子として現れています。

が素数のときは事情が変わる。 は体になり、 以外のすべての元が逆数を持つ。

可換環の定義

ここまでの 7 つに、乗法の可換則をもう一つ足します。

これを満たす環が可換環です[2,4]。整数も多項式環も剰余環も可換で、正方行列だけが仲間から外れた。

可換環論という分野では、環という語は を持つ可換環だけを指す慣例です[2]。順序を気にせずに済むので、イデアルの理論が片側だけで書ける。

零因子から整域へ

でありながら となる が存在するとき、 を零因子と呼びます[4]

零因子を一つも持たない可換環が整域です。 も整域で、 は整域になりません。

整域では消去法則が使える。 から が出る。零因子がある環では、この当たり前に見える推論が壊れます。

さらに 以外のすべての元が逆数を持てば体です。体、整域、可換環と、条件をゆるめるたびに仲間が増えていく。

整域

零因子がない。消去法則が使える。逆数は持たなくてよい。 が入る

以外がすべて逆数を持つ。イデアルは と全体だけ。 が入る

体はつねに整域です。逆は成り立たない。反例は

単元と単数群

逆数を持つ元を単元と呼ぶ[1]。単元全体は乗法について群をなし、 と書く。

個。 と互いに素な 個です。

体とは となる可換環にほかなりません。単元群の大きさが、環がどれだけ体に近いかを測っている。

部分環

が加法・減法・乗法について閉じていて、しかも を含むとき、 を部分環と呼びます[1]

を含むという条件は効く。偶数全体 は加減乗について閉じているのに を含まないので、 の部分環ではない。

ガウス整数 は複素数体の部分環です[2]。整数論で素因数分解を複素数まで広げるときの舞台になる。

環準同型

環から環への写像 が加法とかけ算を保ち、さらに を満たすとき、環準同型と呼びます[1]

をあえて課すところが要点です。これを外すと、すべてを に送る写像まで準同型になってしまい、環の圏がゆがみます。

はイデアルになり、像は部分環になる。群のときと同じ形の準同型定理が、そのまま成り立つ。

からどの環 へも準同型がちょうど一つあります。 の行き先が に決まってしまえば、あとは全部そこから定まるため。

イデアルで割る

イデアルは、加法について部分群であり、しかも環のどの元を掛けても外に出ない部分集合です[1]

部分環との違いはここです。部分環は を含み、イデアルは を含みません。 を含むイデアルは全体に一致してしまう。

イデアル で割った剰余環 が作れる。 とみなす世界で、 で割った例そのもの。

割った先がどんな環になるかで、 の名前が決まります。整域になれば素イデアル、体になれば極大イデアル。

名前の由来

環という言葉は、ヒルベルトが 1892 年から 1897 年にかけて Zahlring と書いたところから広まりました[1]。整数の冪をとると途中で元へ「回り込む」性質を指した命名とされています。

概念そのものはデデキントに遡る。ドイツ語圏の記述では、デデキントが Ordnung という名で導入し、ヒルベルトが Ring という語を与えたと整理されています[2]

公理として書き下したのはフレンケルの 1915 年の仕事です[1]。今のかたちに近い可換環論を立ち上げたのは、エミー・ネーターの 1921 年の論文 Idealtheorie in Ringbereichen になります[1]

現代の圏論的な言い方では、環はアーベル群のテンソル積を積とするモノイド対象です[5]。可換環はその可換なもの。

よくある誤り

かけ算の逆元は要求されません。要求すると体になり、 が仲間から外れます。
から または は導けません。整域だと分かっているときにだけ使える推論です。
分配則を片側だけ確かめても足りません。可換とは限らない以上、左右は別の条件になります。
の部分環ではありません。 を含まないためです。
零環を「環ではないもの」と扱うと、剰余環のたびに例外が増えます。 を許す立場が扱いやすくなります。
可換環でも 以外の等式が勝手に成り立つわけではありません。 が成り立つ環も、成り立たない環もあります。
環準同型では が定義に入っています。加法とかけ算を保つだけでは足りません。

参考文献

Ring (mathematics)(英語版 Wikipedia)
Ring (Algebra)(ドイツ語版 Wikipedia)
Anneau (mathématiques)(フランス語版 Wikipedia)
Anillo (matemáticas)(スペイン語版 Wikipedia)
ring(nLab)
足し算とかけ算はできて、割り算だけができない。その状態を 7 つの公理に書き下したものが環です。分配則が面積の切り分けにすぎないことを図で示し、単位元を要求するかどうかで流儀が割れる事情、零環を残す理由、整数・多項式・正方行列・12 で割った余りの環という 4 つの例を並べます。零因子から整域へ、整域から体へと条件を絞る道すじと、Zahlring という名の由来まで。