Artin-Reesの補題
Artin-Rees の補題は、ネーター環上のイデアルと部分加群の関係を記述する基本定理である。Krull の交叉定理や完備化の理論を支える技術的な道具として重要だ。
定理の主張
をネーター環、 を のイデアル、 を有限生成 -加群、 を部分加群とする。このとき、ある非負整数 が存在して、すべての に対し
が成り立つ。
この式は、 と の交わりが、ある段階から「安定化」することを主張している。
は不規則に振る舞いうる。
倍するごとに規則的に減少する。
証明の概略
証明には Rees 環を用いる。 を に付随する Rees 環とする。 がネーター環ならば もネーター環である。
は有限生成 -加群となる。 は の部分加群であり、 がネーター環なので は有限生成である。
の生成元の次数の最大値を とすると、 に対して定理の等式が従う。
。-進フィルトレーションを次数付き構造に変換。
がネーターなので、部分加群も有限生成。これが安定化の鍵。
系:Krull の交叉定理
Artin-Rees の補題から Krull の交叉定理が導かれる。 とおくと、定理の等式から
となる。 を十分大きくとれば (Jacobson 根基)となり、中山の補題から が従う。
位相的解釈
Artin-Rees の補題は、-進位相に関して部分加群の誘導位相と相対位相が「同じ」であることを意味する。
に -進位相を入れ、 に部分空間としての誘導位相を入れる。一方、 自身に -進位相を入れることもできる。Artin-Rees の補題は、これら 2 つの位相が同値であることを保証する。
一般化
より一般に、 をネーター環、 をイデアルとすると、多重フィルトレーションに対する Artin-Rees の補題が成り立つ。これは多変数の完備化理論に応用される。
また、非可換環への一般化も研究されている。非可換ネーター環でも適切な条件のもとで類似の結果が成り立つことが知られている。
応用例
局所コホモロジーの理論では、Artin-Rees の補題を用いて の性質を調べる。-進完備化 の平坦性も、この補題を通じて示される。