Tor関手の定義と計算

Tor 関手はテンソル積の導来関手であり、加群の平坦性を測る道具である。ホモロジー代数における基本的な関手の一つで、環と加群の構造を深く理解するために不可欠だ。

定義

を可換環、, -加群とする。 の射影分解

をとり、 とテンソルをとって

というチェイン複体を作る。この複体の 次ホモロジーが である。

Tor₀

。テンソル積そのもの。

Tor₁ 以上

テンソル積の「欠陥」を測る。平坦性との関係が深い。

基本性質

Tor 関手は両変数について関手的であり、次の性質をもつ。

短完全列 から長完全列

が得られる。これは第一変数についての長完全列だが、第二変数についても同様の列が存在する。

第一変数の分解

の射影分解を使って計算

第二変数の分解

の射影分解を使って計算(結果は同じ)

平坦性との関係

が平坦 -加群であることと、任意の に対し )が成り立つことは同値である。

特に、 がすべての で成り立てば、 は平坦である。Tor₁ だけで平坦性が判定できる。

計算例

の場合を考える。

の射影分解は である。 とテンソルをとると

となる。 の核は なので

が得られる。 のとき Tor₁ は消え、テンソル積は完全関手として振る舞う。

局所化と Tor

の積閉集合とする。局所化は平坦なので、 が成り立つ。Tor の計算は局所的に行える。

また、 がネーター環で , が有限生成ならば、 も有限生成である。これは導来関手が「有限性」を保つことを示している。