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無限に続く展開を環の中に入れる|I 進位相と完備化

の中では を書けません。 に移ると書けます。

差は完備かどうかです。 で切り詰めた情報を無限に積み上げてよい環に移す操作を、完備化と呼びます。

進位相

を環、 をイデアルとします。 の基本近傍系にとると、 に位相が入ります[2]

開集合の基本形は です。 の中に入るほど に近い、という測り方になります。

数列 に収束するとは、どの に対してもある段から先で となること。深く沈むほど小さい。

なら、 で何回割れるかが近さの尺度です。 にとても近い数になります。

ふつうの絶対値

は大きい数。 から遠い

進の測り方

にとても近い。 で 100 回割れるため

近さの意味が入れ替わります。この位相のもとで極限をとると、見慣れない収束が起きる。

ハウスドルフになる条件

進位相がハウスドルフになるのは、 のとき、そしてそのときに限ります[2]

交わりに でない元 が残っていると、 はどの にも入るので と分離できません。位相が点を区別できなくなる。

ネーター環で が Jacobson 根基に入っていれば、交叉定理から交わりが になります。ネーター局所環ならつねにハウスドルフです[2]

完備化は逆極限

完備化はコーシー列の同値類として作れますが、逆極限で書くほうが扱いやすい[2]

各段の は「 桁まで見た近似」です。段どうしは という切り捨てでつながっています。

逆極限の元は、切り捨てで整合する近似の列。つまり無限に続く展開そのものです[3]

自然な写像 の核は です。ハウスドルフなら単射になります。

例:多項式環から形式的冪級数環へ

とします。 で切り詰めた多項式の全体です。

逆極限をとると、係数を無限に並べたものが得られます。

にありませんが、 にはあります。しかもこれは の逆元です。

もとの環では単元でなかった が、完備化すると単元になる。定数項が でない級数はすべて単元です。

例:整数環から 進整数環へ

とすると です[3]。各元が 進展開を持ちます。

係数の選び方は一意に決まります。桁が無限に続くので、 は非可算になる[3]。もとの は可算です。

見慣れない等式も出ます。 進展開は、 が無限に並んだものです[4]

有理数はどれも、いずれ周期的な展開になります[4] を書くと、先頭の のあとに が繰り返される形。

10 進小数で有理数が循環するのと同じ現象です。並ぶ向きが逆になっているだけ。

完備化したあとに残る性質

が有限生成なら、 自身が 進位相で完備になります[1]。完備化を 2 度やっても何も増えません。

各段は変わりません。 が成り立ちます[1]。粗く見るかぎり、もとの環と同じものが見えている。

ネーター環なら もネーターです。さらに 上平坦になります[2]。完全列を壊しません。

局所環 進完備化は局所環で、極大イデアルは です。剰余体も変わらない。

なので、有限段の情報は完備化で変化しない。
ネーター環では もネーターで、 は平坦。
局所環では が忠実平坦になり、消える情報がない。
有限生成加群では が成り立つ。

最後の同型が便利です。完備化という極限操作が、テンソル積という代数の操作に置き換わります。

例:完備化で分かれる特異点

を原点で局所化します。曲線としては原点で自分自身と交わる形。

もとの環は整域です。 が既約なので、 でない元どうしの積が になりません。

ところが完備化すると が作れます。定数項が なので、平方根が冪級数として書けるためです。

完備化した環では 2 つの成分に分かれます。原点で交わる 2 本の枝が、局所的には別々のものとして見える。

完備化は、局所環より細かく点のまわりを見る道具です。もとの環では見えなかった分解が現れます。

加群の完備化

-加群とすると、完備化は で定まります。

がネーターで が有限生成なら です[2]。有限生成でないとこの同型は崩れます。

平坦性も有限生成の範囲での話になります。無限生成の加群では、完備化が完全列を保たない例が作れる。

完備化は逆極限なので、素朴には 左完全にしかならない はずのものです。

ネーター環と有限生成加群に限ると完全になります。Artin-Rees の補題がその保証を与えます。

が有限生成でないとき

が有限生成でないと、 進位相で完備にならない例があります[1]

完備化して完備にならない、という落とし穴です。定理の仮定に の有限生成が入っているのは、ここを避けるため。

ネーター環ならイデアルはすべて有限生成なので、この心配は要りません。

確かめかた

完備化が正しく計算できたかどうかは、各段の剰余環で見ます。

を計算して と一致するか。ずれていれば、逆極限のとり方を間違えています。

なら です。 次までの多項式が並ぶ、という一致がすぐ確かめられます。

の中で、 の逆元はどれですか。

  • 存在しない
__RESULT__

を展開すると、 の各冪が打ち消し合って が残ります。 進位相では なので、この無限和が意味を持ちます。 の中には逆元がありません。

つまずきやすいところ

の環で を単射だと思う。核がちょうどこの交わりです。
完備化しても各段が変わると考える。 で、粗い情報は同じです。
有限生成でない加群に を当てる。同型が崩れます。
が有限生成でないときに、完備化が完備だと決めてかかる。反例があります。
完備化で環が小さくなると考える。単元が増え、分解も増えます。

有限段の情報は変えずに、無限に続く展開だけを足す。完備化がしているのはそれだけです。

参考文献

Completion, Lemma 10.96.3. The Stacks Project.
Adic topology. Encyclopedia of Mathematics.
Matthias Künzer. *Kommutative Algebra*, §1.2.2.3. Universität Stuttgart.
Keith Conrad. *The p-adic expansion of rational numbers*. University of Connecticut.
$I^n$ を $0$ の基本近傍系にとると、$I$ で何回割れるかが近さの尺度になります。$\bigcap_n I^n = 0$ ならこの位相はハウスドルフで、完備化への写像が単射。完備化は $\varprojlim R/I^n$ で、$k[x]$ からは $k[[x]]$ が、$\mathbb{Z}$ からは $p$ 進整数環が出てきます。有限段の情報は変わらず、増えるのは単元と分解のほう。原点で交わる曲線が完備化すると 2 本に分かれる例まで見ます。