局所化するとどの素イデアルが消えるのか?拡大と縮約の 1 対 1 対応
の素イデアルは と、素数ごとの で無限にあります。
これを で局所化した では、素イデアルが と の 2 つだけになる。残りは全部消えます。
どれが残ってどれが消えるか。分母に許した元との交わりだけで決まる。
拡大と縮約
を可換環、 を乗法的集合、 を標準的な準同型とします。
イデアルは 2 つの向きに移せます。 のイデアル を へ送るのが拡大で、分母を許した集合になる。
逆に のイデアル を へ引き戻すのが縮約で、こちらは逆像です。
どちらの操作もイデアルをイデアルに移す。問題は、往復すると元に戻るかどうかになる。
縮約すると戻るとは限らない
一般のイデアルでは戻りません。、、 で試します。
は 。ここでは が単元なので、 の が消えて になる。
縮約を計算すると で、 には戻りません。分母に許した のぶんだけ、イデアルが太っている。
一般に、縮約は次の形になります。
ですが なので、 が拾われる。この操作を飽和といい、 を の による飽和といいます。
素イデアルなら 1 対 1 に対応する
素イデアルに限ると、往復がきちんと戻る。
の素イデアル全体と、 の素イデアルのうち と交わらないもの全体。この 2 つが拡大と縮約で 1 対 1 に対応します。
と交わる素イデアルは、対応の相手を持たない。拡大すると全体になってしまうためです。
に元 があると、 が に入る。単位元を含むイデアルは環全体なので、素イデアルとしては残りません。

拡大したものが素になる
とし、 が素イデアルであることを見ます。
とすると、 と をとって と書ける。
分数が等しいとは、ある で となることです。移項すると 。
も も の元なので には入らない。 が素だから、残るのは です。
もう一度素であることを使うと か になり、 か が に入る。
が全体でないことの確認もいる。
なら、 となる が見つかります。これは交わらないという仮定に反する。
縮約すると戻る
のとき、 になります。
飽和の形にあてはめると、 は となる があることです。 で が素だから、 が従う。
さきほど が に太ったのは、 が素イデアルでなかったからです。 なのに も も に入っていない。
素イデアルなら、この拾い上げが起きません。飽和しても自分自身のまま。
逆向きも戻る
のイデアル については、素かどうかによらず が成り立ちます。
とすると、 をかけて 。だから で、 になる。
逆の包含は定義からすぐ分かる。つまり のイデアルは、すべて のイデアルの拡大として書けます。
イデアルは往復で太ることがある。戻るのは飽和したものだけ
イデアルはすべて拡大として書ける。往復すると必ず戻る
が素なら も素です。素イデアルの逆像は素イデアルになるため。 が空であることは、 をとると が単元になって となることから分かります。
例: では だけが消える
とすると、 と交わる素イデアルは だけです。 を含む素イデアルがほかにないため。
残りの はすべて の素イデアルへ移る。素イデアルが 1 つだけ減った形。
という記号で書くと、 は から 点を抜いた開集合にあたります。
例: には素イデアルが 2 つしかない
とすると、 と交わらない素イデアルは に含まれるものだけです。
に含まれる素イデアルは と の 2 つ。だから は 2 点になります。
や は と交わるので消える。 も も分母に使えるようになり、単元になってしまうからです。
残った はただ 1 つの極大イデアルで、 は局所環になる。
| 素イデアルは と素数ごとに無限個 | |
| が消えて、残りはそのまま | |
| と の 2 つだけ | |
| の 1 つだけ |
は での局所化です。 以外のどの素イデアルも と交わるので、残るのは だけになる。
対応は包含も保つ
この 1 対 1 対応は、順序も保つ。 なら で、逆も同じ。
だから素イデアルの鎖がそのまま移ります。 の素イデアルの鎖は、 で終わる の鎖と 1 対 1 になる。
局所化したときの次元が、もとの素イデアルの高さと一致します。
開集合を見るか、点のまわりを見るか
局所化の選び方で、見える範囲が変わる。
を分母に許す。 を含まない素イデアルだけが残り、開集合 を見ることにあたる
の外を分母に許す。 に含まれる素イデアルだけが残り、 のまわりを見ることにあたる
前者は広がりのある範囲を切りとる操作で、後者は 1 点まで絞る操作です。どちらも「 と交わるものが消える」という同じ規則から導けます。
分母に許す元の集合 S を決める
S と交わる素イデアルが消える
残った素イデアルが局所化した環の Spec になる
、 とするとき、 の素イデアルに対応しないのはどれですか。
、 とするとき、 の飽和 はどれですか。
となる があるかを見ます。 なら で条件を満たすため、 が拾われる。 から の冪をすべて落とした が飽和です。
と交わるかどうか。素イデアルが残るか消えるかは、この一点だけで決まります。











3∈S なので (3) は S と交わります。拡大すると 33=1 を含んでしまい、環全体になる。(0) と (5) は S と交わらないので、そのまま S−1R の素イデアルに移ります。