局所化と素イデアルの対応
局所化を行うと、元の環のイデアル構造が単純化されます。特に素イデアルについては、局所化後に「生き残る」ものと「消える」ものがはっきり分かれます。
イデアルの拡大と縮約
を可換環、 を乗法的集合、 を標準的な準同型とします。
のイデアル に対し、拡大イデアル を
で定義します。これは のイデアルです。
逆に、 のイデアル に対し、縮約イデアル は のイデアルです。
素イデアルの対応定理
局所化における最も重要な結果は、素イデアルが綺麗に対応することです。
対応定理
の素イデアルと、 の素イデアルで と交わらないもの()との間に、拡大・縮約による1対1対応がある。
素イデアル が と交わる()場合、 となり、拡大すると全体になって「消えて」しまいます。
証明の概略
のとき が素イデアルであることを示します。 とすると、ある と が存在して です。すなわち となる があり、 です。 より となり、 が素なので または です。
逆に、縮約が元の素イデアルを復元することも示せます。
素イデアル での局所化
で局所化した場合を考えます。対応定理より
となります。つまり の素イデアルは に含まれる素イデアルだけから来ます。
特に は の唯一の極大イデアルとなり、 は局所環です。
具体例
、( は素数)とします。
の素イデアルは と のみです。これは の素イデアルのうち に含まれるもの、すなわち と に対応します。
スペクトルの幾何学的意味
代数幾何学の視点では、 は「空間」、 はその「開部分集合」に対応します。
\mathrm{Spec}(R_f)
が消えない点全体。 に対応。
\mathrm{Spec}(R_\mathfrak{p})
点 の「芽」。 を含む閉集合の局所的な情報。
局所化は「見たい部分だけを拡大して見る」操作であり、素イデアルの対応はどの点が拡大された視野に入っているかを教えてくれます。