加群の長さと組成列
加群の長さは、加群の「大きさ」を測る不変量の一つである。有限次元ベクトル空間の次元を一般化した概念といえる。
組成列の定義
-加群 の組成列(composition series)とは、部分加群の列
であって、各商 が単純加群(非ゼロで真の部分加群を持たない加群)となるものをいう。商 を組成因子と呼ぶ。
組成列が存在するとき、その長さ は列の取り方によらず一定である。これが Jordan-Hölder の定理の主張だ。
加群の長さ
組成列をもつ加群 に対し、その組成列の長さを の長さ(length)といい、 または と書く。組成列をもたない加群の長さは無限大と定める。
長さが有限な加群
組成列が存在する加群。Artin 加群かつネーター加群であることと同値。
長さが無限な加群
組成列が存在しない加群。昇鎖または降鎖が止まらない。
長さの性質
長さは加法的な不変量である。短完全列
があるとき、 が成り立つ。これはベクトル空間の次元公式 の一般化にほかならない。
体 上の有限次元ベクトル空間 の場合、 である。各組成因子が 1 次元部分空間の商、すなわち 自身と同型になるためだ。
Jordan-Hölder の定理
が組成列をもつとする。このとき、任意の 2 つの組成列は同じ長さをもち、組成因子の多重集合(重複を許した集合)は順序を除いて一致する。
長さの一意性
どの組成列をとっても長さは同じ
組成因子の一意性
現れる単純加群は(順序と重複度を込めて)同じ
この定理により、加群の長さは well-defined な不変量となる。証明には Schreier の細分定理や帰納法を用いるのが標準的なアプローチだ。
例
-加群 を考える。組成列として
がとれる。組成因子は 、、 であり、長さは 3 である。別の組成列をとっても、同じ組成因子が(順序を変えて)現れる。