深さと次元はどこに現れるか?局所コホモロジーの消えない段
加群のうち、イデアル の冪で消される元だけを集める。この操作の導来関手が局所コホモロジーです[5]。
何段目で消えなくなるかが深さ、何段目まで生き残るかが次元。2 つの不変量が、同じ列の両端として現れます。
冪で消される元を集める
イデアル と加群 に対し、次の部分加群をとります。
ねじれ部分と呼びます[4]。幾何で言えば、台が に収まっている部分。
は左完全ですが、完全ではありません。全射を送っても全射になるとはかぎらない。
そこで導来関手をとります。 と書き、局所コホモロジーと呼びます[2]。

Čech 複体で計算する
入射分解をとるのは大変です。 の生成元があれば、もっと素朴な複体で計算できます[3]。
とすると、次の複体のコホモロジーが局所コホモロジーになります。
各項は局所化です。分母を許すたびに、どんどん大きな加群になっていく。
この形を 拡張 Čech 複体 と呼びます。長さは生成元の本数 です。
複体の長さが なので、 が で自動的に従う。
生成元の本数で上から抑えられる、という結論がここから出ます。 を少ない元で生成できるほど、消えない段が狭くなる。

例:直線から 1 点を抜く
、 で計算します。生成元が 1 個なので複体は 。
は の核です。 は整域なので による局所化は単射。だから 。
は余核になります。
が張る無限次元の空間です。有限生成の加群から出発しても、局所コホモロジーは有限生成になりません。
上と下から挟む
局所環 と有限生成加群 をとります。 の次元を 、深さを とする。
このとき が でない段は、 以上 以下に収まります[1]。
さらに両端では実際に になりません。 かつ が成り立つ。
上側の消滅が Grothendieck の消滅定理、両端が消えないことが非消滅定理です[1]。

深さの定義そのものになる
いちばん下の段を見ると、深さがそのまま出てきます[4]。
正則列の長さとして定義した深さと一致します。正則列を使わずに深さを定義できる、という言い方もできる。
正則列は存在しないこともあり、扱いにくい場面があります。局所コホモロジーの側から定義すると、その困りごとが消えます。
Cohen-Macaulay の言いかえ
帯の上端と下端が一致する場合を考えます。深さと次元が同じ値になる状態です。
このとき は 以外ですべて になります[5]。消えない段がちょうど 1 つ。
消えない段は 1 つだけ。深さと次元が一致している
複数の段が生き残る。低いところに余分な成分が残っている
低い段が消えないのは、埋め込まれた成分や次元のずれがあるときです。幾何で言えば、余分な点や低次元の枝がくっついている。
例:埋め込まれた点がある環
を見ます。次元は です。
をとると 、 なので、。極大イデアルで消える元があります。
だから で、深さは 。次元 とずれています。
帯が 段にまたがるので Cohen-Macaulay ではありません[1]。直線に点が 1 つ埋め込まれた形です。
局所双対
Cohen-Macaulay 局所環で標準加群 を持つ場合、局所コホモロジーが Ext で書けます[1]。
は Matlis 双対です。左辺は有限生成でない大きな加群ですが、右辺は有限生成。
計算しにくい側を、計算しやすい側へ移す道具になります。段の番号が から引いた形でひっくり返る。
局所環 上の有限生成加群 が Cohen-Macaulay であることと同値なのはどれですか。
- が で成り立つ
- すべての で
深さは下端、次元は上端。ばらばらに定義していた 2 つの量が、同じ列の両端として並びます。













深さと次元が一致することが、消えない段が i=dimM の 1 つだけになることと同値です。すべて消えるのは M=0 の場合だけになります。