二重双対に戻る加群とは何か?反射的加群と因子類群
加群 から二重双対 への自然な写像が同型になるとき、 を反射的と呼びます[5]。
正規ネーター整域の上では、階数 の反射的加群の同型類が群をなします。その群が因子類群であり、環が一意分解整域からどれだけ離れているかを測ります[3]。
双対加群
を双対加群と呼びます。 から への線形写像を集めたもの。
もう一度双対をとると になります。ここに からの自然な写像が入る。
元 を「 に を返す関数」と見なす写像です[2]。線形代数のベクトル空間で見た構成と同じ形。

3 段階の条件
に何を要求するかで、名前が分かれます。
単射なら torsionless、全単射なら反射的です[5]。何も要求しなければ、ただの加群。
有限生成の自由加群は反射的になります。基底の双対基底をとれば、 が同型だと直に確かめられる。射影加群も反射的です。
が単射。 が自由加群の直積に埋め込める
が全単射。二重双対をとってももとに戻る
整域の上では、有限生成でねじれがないことと torsionless であることが一致します。分母を払えば自由加群に埋め込めるためです。
例: が壊れる場合
加群 をとります。 なので 。
二重双対も になり、 は単射になりません。ねじれがあると双対が潰れます。
次は 。ねじれはありませんが、 です。
有限生成でない場合には、ねじれがなくても双対が消えることがある。有限生成という条件が効いています。
高さ 1 の素イデアルだけで決まる
正規ネーター整域では、反射的であることが余次元 の情報だけで書けます[1]。
高さ の素イデアルで局所化すると離散付値環になります[4]。そこでの様子をすべて集めて交わらせると、反射的加群が復元される。
言いかえると、余次元 以上でどうなっていても結果に響きません。反射的加群は、低い余次元の情報だけで決まる対象です。

Serre の 条件との関係
反射的加群は を満たします[1]。余次元 で随伴素イデアルを持たない、という条件です。
深さの言葉で書けば、各素イデアルで が成り立つ。
があるからこそ、余次元 の情報を貼り合わせて全体が復元できます。低い余次元で穴が開いていないという条件です。
階数 1 のものを集めると群になる
を正規ネーター整域とし、階数 の反射的加群だけを集めます。同型類のあいだに演算が入ります[2]。
テンソル積は反射的とは限りません。そこで二重双対をとり、反射包へ戻す。この一手間で演算が閉じます。
逆元は双対です。 となり、単位元は 。
因子類群
こうしてできた群を因子類群と呼び、 と書きます[3]。因子イデアルの群を単項イデアルで割った商、という書き方もある。
高さ の素イデアルの類が生成元になります。単項なら 、単項でなければ でない元。
であることと、 が 一意分解整域 であることが同値です。
高さ の素イデアルがすべて単項なら、素元分解が一意になる。
因子類群は、一意分解からのずれをそのまま測る量です[4]。 に近いほど分解が素直になる。
例:二次錐
をとります。原点に頂点を持つ二次錐の座標環です。
は高さ の素イデアルで、単項ではありません。だから 。
一方 で、 を使うと になります。反射包をとると極大イデアルのぶんが消えて が残る。
位数 の元です。実際 になります[1]。

幾何で見ると分かりやすい形です。円錐の上には母線という直線が乗っています。
母線 1 本は、方程式 1 本では切り出せません。ところが 2 本合わせると平面で切った形になり、方程式 1 本で書ける。
例:
代数的整数の側にも同じ現象があります。 の をとる。
は単項ではありませんが、 で単項になります。位数 の元です。
デデキント整域では、反射的加群と可逆加群が一致します。因子類群がイデアル類群と同じものになる。
Picard 群との差
可逆な加群、つまり局所自由で階数 のものだけを集めた群が Picard 群です。 となります。
二次錐では ですが 。差が出るのは、頂点の局所環が一意分解でないためです。
すべての局所環が一意分解整域なら、2 つの群は一致します[3]。正則な環ではこの条件が成り立つ。
局所自由で階数 。どの点でも自由になっている
反射的で階数 。特異点の上では自由にならなくてよい
反射包という操作
任意の有限生成でねじれのない加群 に対し、 が反射包になります。 を最小限だけ太らせて反射的にしたもの。
高さ の素イデアルでの交わりをとる操作と同じです。余次元 以上で開いている穴を埋める、と読めます。
ねじれのない有限生成加群から始める
高さ 1 の素イデアルで局所化する
すべての局所化を交わらせる
反射包が得られる
が正規ネーター整域のとき、 と同値なのはどれですか。
- が正則局所環である
- が一意分解整域である
- が体である
余次元 だけを見て貼り合わせる。この視点を持つと、特異点のある環でも因子の言葉が使えるようになります。












高さ 1 の素イデアルがすべて単項であることが Cl(R)=0 で、これは一意分解と同値です。正則なら一意分解ですが、逆は成り立ちません。