共通解があるかどうかを行列式ひとつで見分ける(終結式と消去理論)
2 つの多項式が共通の根を持つかどうかは、根を求めずに判定できます。係数だけを並べた正方行列を作り、その行列式をとるだけ。
値が なら共通根があり、 でなければない。この行列式を終結式と呼びます[1]。
共通因子の有無を線形代数に置きかえる
体 の上で の次数を 、 の次数を とします。どちらも 以上とする。
と が定数でない共通因子 を持つとしましょう。、 と書けます。
このとき です。 かつ なので、次数の小さい組み合わせで が作れたことになる。
逆も成り立ちます。、 で両方は でない 、 が を満たすなら、 と は共通因子を持つ。
理由は一意分解性にあります。 で と が互いに素なら、 は を割り切るしかない。 と矛盾します。
つまり共通因子の有無は、次の線形写像が単射かどうかと同じ問題になる。
定義域は と を満たす組の空間で、次元は 。値域は次数が 未満の多項式全体で、次元はやはり 。
次元が等しいので、単射でないことと行列式が になることが一致します。
この行列式が 終結式 であり、 と書きます。
係数から機械的に作れて、共通因子があるかどうかだけを見分ける量。
シルベスター行列
基底を単項式にとって、いまの線形写像を行列で書き下します。ここで現れる行列をシルベスター行列と呼びます[3]。
大きさは 。 の係数を並べた行が 本、 の係数を並べた行が 本[3]。
各行は 1 つずつ右へずらして置きます。これは を掛ける操作に対応する。

行の本数が逆になっている点は、間違えやすいところ。 の係数は 本、 の係数は 本です。
の次数が 未満なので、 に掛ける単項式が の 個。そこから来ています。
例:2 次と 1 次
と で試します。、 なので の行列。
行列式は になります。 と で になる。
の根は で、 の根は 。根が一致した瞬間に終結式が消えます。
根の積で書ける
の根を 、 の根を とします。代数閉体の中で重複を込めて数える。
このとき終結式は根の差の積になります[2]。
差の積という形を見れば、共通根があるときに になる理由がそのまま読めます。どこか 1 つの因子が消えるだけ。
をまとめると、 の値を の根で測る形にもなる。
順序を入れかえると符号が変わります。 です[4]。
例:共通根がある場合とない場合
と を見ます。根 を共有している。
根の積で書くと です。行列式を展開しても になります。
次は共通根がない例。、 とします。
、 なので です。 から離れているほど根どうしが離れている、という読み方もできる。
先頭係数が消える場合だけは扱いが変わります。次数の下がった多項式として作り直すか、無限遠での交わりとして数えることになる。
イデアルの中に入っている
終結式には、判定の道具にとどまらない性質があります。 と が生成するイデアルの元になっている[1]。
、 を満たす 、 がとれます。ベズーの等式を、体でない係数環まで広げた形です。
証明はシルベスター行列の余因子から出ます。連立方程式を解く代わりに、余因子行列を掛ければ係数が具体的に書ける。
終結式が 0 かどうかで、共通因子の有無が分かる
と の組み合わせで作れる、変数を含まない量
後者の見方が消去理論につながります。変数を含まない元をとり出せるということは、その変数を消せたということ。
変数を消す
ここから 2 変数にします。 を の多項式と見て、係数は の元とする。
について終結式をとると、 だけの多項式が残ります。 です。
イデアルの元だったことを思い出すと、消去イデアル に入っていると分かる。
共通解 があれば、 を代入した と が を共有します。だから 。
つまり終結式の根は、解の 座標をすべて含んでいます。解を射影した影を、方程式 1 本で書き下したことになる。

例:円と直線
と をとります。 の多項式として見ると、 は 2 次で は 1 次。
シルベスター行列は です。
行列式は になります。因数分解すると 。
根は と 。実際の交点は と なので、 座標が過不足なく出ています。
例:円と放物線
と にします。同じく で消す。
行列式は です。 が実数解を与える。
から を代入した と一致します。代入で解ける場合は代入と同じ答えになる、という確かめ方ができる。
代入が使えるのは について解けるときだけです。終結式はその条件を要りません。
判別式は自分自身との終結式
と の終結式をとると、重根の有無が分かります。重根は と の共通根だからです。
これを整えたものが判別式[4]。
2 次式 で計算すると が出ます。見慣れた判別式が、終結式の特別な場合として出てくる。
3 次式 なら です。
に固定して を動かすと、判別式は 。 で を通ります。
そのとき は重根を持ちます。グラフが 軸に接する瞬間です。
交点の個数を数える
と の次数を 、 とすると、 の についての次数は 以下になります。
平面曲線が 個より多くは交わらない、というベズーの定理の姿がここに出ている[4]。
無限遠点と重複度まで数えれば、ちょうど 個。終結式の次数が落ちる分は、無限遠へ逃げた交点にあたります。
円と直線なら で、終結式も 2 次。交点も 2 個そろう。
先頭係数が消えると終結式の次数が下がる。落ちたぶんの交点は無限遠にある。
1 変数ずつしか消せない
終結式が扱うのは 2 つの多項式です。3 本以上の式や 3 変数以上を相手にするときは、繰り返し使うことになる。
と を作り、次に を消す。この手順で変数は減ります。
ただし途中で余計な因子が入り込みます。消去イデアルを正確に生成するとは限らない。
2 本ずつ終結式をとる
変数が 1 つ減る
余分な因子が付く
最後に本当の解かどうかを確かめ直す
消去イデアルそのものを求めたいときは、辞書式順序のグレブナー基底を使います。変数を一度にすべて整理できるためです[1]。
計算量では終結式のほうが軽い。1 変数だけ消したい、交点の 座標だけ欲しい、という場面では今も現役です。
影は閉じているとは限らない
終結式が与えるのは、解の射影を含む代数的集合です。逆向きは自動では成り立ちません。
でも、 の上に解がない場合がある。 と の先頭係数が両方消えると、次数が落ちて判定が崩れます。
、 の終結式はいくつですか。
- 0
- 9
- 3
先頭係数が消えない範囲では、影はきちんと閉じた集合になります。消える点だけを別に調べれば足りる。
例:先頭係数が消える場合
と を で消します。 の の係数は です。
になる。根は で、実際に と が解です。
ところが だけを見ると、 の上に解はありません。 の係数が消えるためです。
この 1 点を除けば射影は素直に振る舞う。除いた点をどう扱うかが、消去理論の細かい部分になります。
係数だけで共通根の有無が決まる。この一点を軸にすると、判別式もベズーの定理も同じ道具の言いかえとして読めます。











f の根 ±1 を g に代入すると g(1)=−3、g(−1)=−3 です。積は 9 になります。共通根がないので 0 にはなりません。