y=arctan1xy = \arctan\dfrac{1}{x}

関数 y=arctan1xy = \arctan\dfrac{1}{x} のグラフ

y=arctan1xy = \arctan\dfrac{1}{x} は、逆正接関数の中身を逆数にした形です。値そのものは π2-\dfrac{\pi}{2}π2\dfrac{\pi}{2} のあいだに収まりながら、原点で幅 π\pi の跳びをもつという、めずらしいふるまいをします。

定義域と値域

定義域は x0x \neq 0 です。1x\dfrac{1}{x}00 にならないので arctan1x\arctan\dfrac{1}{x}00 にならず、右の枝は (0,π2)\left(0, \dfrac{\pi}{2}\right) に、左の枝は (π2,0)\left(-\dfrac{\pi}{2}, 0\right) に収まります。

原点での跳び

近づき方1x\dfrac{1}{x}yy
x0+x \to 0^{+}+\to +\inftyπ2\to \dfrac{\pi}{2}
x0x \to 0^{-}\to -\inftyπ2\to -\dfrac{\pi}{2}

左右の極限がどちらも存在しながら値が違うので、これは跳びの不連続であり、その幅はちょうど π\pi です。x=0x = 0 にどんな値を決めても連続にはできません。

しかも値は有界のままなので、yy 軸は垂直漸近線ではありません。発散する不連続と跳ぶ不連続の違いが、はっきり見える例になっています1

対称性と漸近線

f(x)=f(x)f(-x) = -f(x) より奇関数で、原点に関して点対称です。x±x \to \pm\infty では 1x0\dfrac{1}{x} \to 0 なので y0y \to 0 となり、xx 軸が水平漸近線です。右では上から、左では下から近づきます。

増減

合成関数の微分から次のように整理できます。

y=11+(1x)2(1x2)=11+x2\begin{align*} y' &= \frac{1}{1 + \left(\dfrac{1}{x}\right)^2} \cdot \left(-\frac{1}{x^2}\right) \\ &= -\frac{1}{1 + x^2} \end{align*}

整理された右辺には x=0x = 0 を代入でき、そこでも 1-1 という値をもちます。関数自身は跳んでいるのに、導関数の式は原点をまたいでなめらかにつながって見えるのです。どちらの枝も傾き 1-1 で原点へ向かい、そこで縦に π\pi だけずれます。

逆正接関数との関係

導関数が arctanx\arctan x の導関数 11+x2\dfrac{1}{1+x^2} とちょうど符号違いですから、arctanx+arctan1x\arctan x + \arctan\dfrac{1}{x} は各枝で定数になります。値を一つ代入して調べると次のとおりです。

arctanx+arctan1x={π2(x>0)π2(x<0)\arctan x + \arctan\frac{1}{x} = \begin{cases} \dfrac{\pi}{2} & (x > 0) \\ -\dfrac{\pi}{2} & (x < 0) \end{cases}

つまりこのグラフは、連続な arctanx\arctan x を上下に反転させ、右半分は π2\dfrac{\pi}{2} だけ、左半分は π2-\dfrac{\pi}{2} だけ平行移動したものです。左右でずらす量が π\pi 違うことが、原点の跳びの正体にほかなりません。

凹凸

二階導関数は y=2x(1+x2)2y'' = \dfrac{2x}{(1+x^2)^2} です。x>0x > 0 で正、x<0x < 0 で負なので、右の枝は下に凸、左の枝は上に凸です。符号が変わる x=0x = 0 は定義域の外なので変曲点はありません。

逆余接関数の二つの流儀

逆余接 arccot\operatorname{arccot} の定義には二通りあります。

流儀値域連続性
主値を (0,π)(0, \pi) にとるπ2arctanx\dfrac{\pi}{2} - \arctan x(0,π)(0, \pi)実数全体で連続
逆数を通すarctan1x\arctan\dfrac{1}{x}00 を除く (π2,π2)\left(-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right)原点で跳ぶ

後者がこのグラフです。x<0x < 0 では前者と π\pi だけ食い違うので、教科書や計算ソフトがどちらを採用しているかは確かめる必要があります。

応用

プログラミングで座標から角度を求めるとき、arctanyx\arctan\dfrac{y}{x} をそのまま使うと第 11 象限と第 33 象限、第 22 象限と第 44 象限が区別できません。多くの言語が atan2 という二引数の関数を別に用意しているのは、この不連続を避けて全域を正しく返すためです2。このグラフは、その必要性を目で見て納得できる形にしたものだといえます。

  1. Classification of discontinuities、Wikipedia
  2. atan2、Wikipedia