y=x4x2y = x^4 - x^2

四次関数 y=x4x2y = x^4 - x^2 のグラフ

y=x4x2y = x^4 - x^2 は、22 つの谷と中央の山からなる W 字の曲線です。物理では二重井戸ポテンシャルと呼ばれ、対称性の破れを説明する基本の形として現れます。素の y=x4y = x^4 が谷を 11 つしかもたないのに対し、x2-x^2 を加えると底が割れて 22 つになります。

定義域と対称性

定義域はすべての実数です。偶数次の項しかないので偶関数で、グラフは yy 軸に関して対称です。

切片

x4x2=x2(x1)(x+1)x^4 - x^2 = x^2(x - 1)(x + 1) と因数分解できるので、xx 切片は x=0x = 0(重解)と x=±1x = \pm 1(単解)です。原点では xx 軸に接し、±1\pm 1 では横切ります。

平方完成による最小値

x2x^2 をひとまとまりと見て平方完成すると、次のように書けます。

x4x2=(x212)214x^4 - x^2 = \left( x^2 - \frac{1}{2} \right)^2 - \frac{1}{4}

右辺の第 11 項は 00 以上なので、最小値は 14-\dfrac{1}{4} で、x2=12x^2 = \dfrac{1}{2} すなわち x=±12x = \pm\dfrac{1}{\sqrt{2}} のときに実現します。微分を使わずに谷の深さと位置が出るのが、この形のよいところです。

増減と極値

導関数は次のようになります。

y=4x32x=2x(2x21)y' = 4x^3 - 2x = 2x(2x^2 - 1)

x=0x = 0x=±12±0.707x = \pm\dfrac{1}{\sqrt{2}} \approx \pm 0.70700 になり、極値は 33 つです。

xx極値
12-\dfrac{1}{\sqrt{2}}極小14-\dfrac{1}{4}
00極大00
12\dfrac{1}{\sqrt{2}}極小14-\dfrac{1}{4}

値域は y14y \geq -\dfrac{1}{4} です。中央の山は谷から 14\dfrac{1}{4} だけ高く、これが 22 つの谷を隔てる障壁の高さになります。

凹凸

二階導関数は y=12x22y'' = 12x^2 - 2 で、x=±16±0.408x = \pm\dfrac{1}{\sqrt{6}} \approx \pm 0.408 で符号が変わります。変曲点は (±16,536)\left( \pm\dfrac{1}{\sqrt{6}}, -\dfrac{5}{36} \right)22 つで、そのあいだが上に凸、外側が下に凸です。

x2x^2 の二次関数として見る

t=x2t = x^2 とおくと、tt についての二次関数になります。

y=t2ty = t^2 - t

頂点は t=12t = \dfrac{1}{2} で値は 14-\dfrac{1}{4}、放物線の谷は 11 つだけです。ところが t=x2t = x^2 という対応では、正の tt22 つの xx に対応します。この折り返しが、11 つの谷を 22 つに分けているのです。偶関数の四次関数が W 字になる仕組みは、すべてこの見方で説明できます。x2-x^2 の係数が正だと頂点が t<0t < 0 に移り、xx では実現しないので谷は 11 つのままです。

対称性の破れ

この形が物理で重要なのは、式が左右対称であるのに、いちばん安定な状態は左右どちらかを選ばざるをえないからです。ランダウの理論では自由エネルギーを次のように書きます。

F=a(TTc)φ2+bφ4F = a(T - T_c)\varphi^2 + b\varphi^4

転移温度 TcT_c より高温では φ2\varphi^2 の係数が正で谷は 11 つ、低温では負になって二重井戸に変わります。強磁性体が冷えると磁化の向きがひとりでに定まる現象が、この谷の分裂にあたります。素粒子物理のヒッグス機構も、同じ形のポテンシャルで説明されます。

量子力学

谷が 22 つあると、古典的には一方に落ちた粒子は障壁を越えられません。ところが量子力学ではトンネル効果によって 22 つの谷を行き来でき、その結果いちばん低いエネルギー準位がわずかに 22 つに分裂します。アンモニア分子の反転がその代表例です。