y=x4−x2 四次関数 y=x4−x2 のグラフ
y=x4−x2 は、2 つの谷と中央の山からなる W 字の曲線です。物理では二重井戸ポテンシャルと呼ばれ、対称性の破れを説明する基本の形として現れます。素の y=x4 が谷を 1 つしかもたないのに対し、−x2 を加えると底が割れて 2 つになります。
定義域と対称性
定義域はすべての実数です。偶数次の項しかないので偶関数で、グラフは y 軸に関して対称です。
切片
x4−x2=x2(x−1)(x+1) と因数分解できるので、x 切片は x=0(重解)と x=±1(単解)です。原点では x 軸に接し、±1 では横切ります。
平方完成による最小値
x2 をひとまとまりと見て平方完成すると、次のように書けます。
x4−x2=(x2−21)2−41 右辺の第 1 項は 0 以上なので、最小値は −41 で、x2=21 すなわち x=±21 のときに実現します。微分を使わずに谷の深さと位置が出るのが、この形のよいところです。
増減と極値
導関数は次のようになります。
y′=4x3−2x=2x(2x2−1) x=0 と x=±21≈±0.707 で 0 になり、極値は 3 つです。
| x | 極値 | 値 |
|---|
| −21 | 極小 | −41 |
| 0 | 極大 | 0 |
| 21 | 極小 | −41 |
値域は y≥−41 です。中央の山は谷から 41 だけ高く、これが 2 つの谷を隔てる障壁の高さになります。
凹凸
二階導関数は y′′=12x2−2 で、x=±61≈±0.408 で符号が変わります。変曲点は (±61,−365) の 2 つで、そのあいだが上に凸、外側が下に凸です。
x2 の二次関数として見る
t=x2 とおくと、t についての二次関数になります。
頂点は t=21 で値は −41、放物線の谷は 1 つだけです。ところが t=x2 という対応では、正の t が 2 つの x に対応します。この折り返しが、1 つの谷を 2 つに分けているのです。偶関数の四次関数が W 字になる仕組みは、すべてこの見方で説明できます。−x2 の係数が正だと頂点が t<0 に移り、x では実現しないので谷は 1 つのままです。
対称性の破れ
この形が物理で重要なのは、式が左右対称であるのに、いちばん安定な状態は左右どちらかを選ばざるをえないからです。ランダウの理論では自由エネルギーを次のように書きます。
F=a(T−Tc)φ2+bφ4 転移温度 Tc より高温では φ2 の係数が正で谷は 1 つ、低温では負になって二重井戸に変わります。強磁性体が冷えると磁化の向きがひとりでに定まる現象が、この谷の分裂にあたります。素粒子物理のヒッグス機構も、同じ形のポテンシャルで説明されます。
量子力学
谷が 2 つあると、古典的には一方に落ちた粒子は障壁を越えられません。ところが量子力学ではトンネル効果によって 2 つの谷を行き来でき、その結果いちばん低いエネルギー準位がわずかに 2 つに分裂します。アンモニア分子の反転がその代表例です。