y=e−1/x2 関数 y=e−1/x2 のグラフ
y=e−1/x2 は、原点で異常なほど平らになる関数です。x=0 での値を 0 と定めると、この関数は何回でも微分できるにもかかわらず、原点のまわりでテイラー展開ができません。実関数と複素関数の決定的な違いを示す例として知られています。
定義域と値域
式そのものは x=0 で定義されますが、x→0 で −x21→−∞ より y→0 となるので、f(0)=0 と定めれば実数全体で連続になります。以下この定義で考えます。∣x∣→∞ では指数が 0 へ近づいて y→1 ですが 1 には届かないので、値域は 0≤y<1 です。
対称性と増減
x が 2 乗の形でしか現れないので偶関数で、y 軸に関して対称です。導関数は y′=x32e−1/x2 で、x>0 では正、x<0 では負ですから、原点が最小で左右へ向かって増加します。谷底の値は 0 です。
凹凸
二階導関数は y′′=x64−6x2e−1/x2 です。符号は 4−6x2 で決まり、x=±32≈±0.816 で切り替わります。変曲点はこの 2 点で、そこでの値は e−3/2≈0.223 です。内側では下に凸、外側では上に凸になります。
平坦さの度合い
| x | e−1/x2 |
|---|
| 0.5 | 0.0183 |
| 0.2 | 1.4×10−11 |
| 0.1 | 3.7×10−44 |
どんなべき xn よりも速く 0 に近づくため、グラフは原点の近くで x 軸に貼りついたように見えます。
すべての導関数が原点で 0
微分を繰り返すと、導関数はつねに P(x1)e−1/x2 という形になります。ここで P は多項式です。x1 がどれだけ大きくなっても e−1/x2 の減り方が上回るので、x→0 でこの積は 0 に収束します。したがって f′(0)=f′′(0)=⋯=0 で、あらゆる階の導関数が原点で 0 になります。
テイラー展開できない
すべての導関数が 0 ということは、原点のまわりのマクローリン級数が恒等的に 0 だということです。この級数はすべての x で収束しますが、その値が f(x) と一致するのは x=0 の 1 点だけです。何回でも微分できるのにテイラー級数が関数を表さない、という状況が実際に起こるわけです。無限回微分可能であることを C∞、テイラー級数が関数と一致することを解析的といいますが、この関数は C∞ でありながら解析的ではありません。
複素関数との対比
| 項目 | 実関数 | 複素関数 |
|---|
| 微分 | 1 回できても 2 回とはかぎらない | 1 回できれば何回でも |
| テイラー展開 | 一致するとはかぎらない | 必ず一致する |
| この関数 | C∞ だが解析的でない | 原点は真性特異点 |
e−1/z2 を複素数へ広げると原点は真性特異点になり、原点のどんな近くでもほとんどすべての値をとってしまいます。実数の世界で平らに見えていた点が、複素数へ出るとまったく別の顔をしているわけです。
応用
この関数を土台にすると、ある区間の外では厳密に 0、内側では正の値をとる、何回でも微分できる関数が作れます。∣x∣<1 で e−1/(1−x2)、それ以外で 0 と定めたものがその代表で、隆起関数と呼ばれます。多項式や三角関数では、有限の範囲の外だけで恒等的に 0 になることは起こりません。隆起関数は微分幾何の 1 の分割や、偏微分方程式で関数をなめらかにならす軟化子の構成に使われ、局所的な操作を全体へ持ち上げるための基本的な道具になっています。