y=ln⁡∣x∣y = \ln|x|

関数 y=ln⁡∣x∣y = \ln|x| のグラフ

y=ln⁡∣x∣y = \ln|x| は、対数関数の定義域を負の側へ広げた形です。ln⁡x\ln x が x>0x > 0 でしか定義されないのに対し、真数を絶対値にすることで x=0x = 0 以外のすべての実数で値をもつようになります。この一手間が、1x\dfrac{1}{x} の積分を書くうえで欠かせません。

定義域と値域

定義域は x≠0x \neq 0、値域はすべての実数です。任意の実数 yy に対して x=±eyx = \pm e^{y} が対応するので、どの値もちょうど 22 回ずつとります。

対称性

f(−x)=ln⁡∣−x∣=ln⁡∣x∣=f(x)f(-x) = \ln|-x| = \ln|x| = f(x) より偶関数で、グラフは yy 軸に関して対称です。右半分は y=ln⁡xy = \ln x そのもので、左半分はその鏡像になります。

切片と漸近線

ln⁡∣x∣=0\ln|x| = 0 となるのは ∣x∣=1|x| = 1 のときなので、xx 切片は (1,0)(1, 0) と (−1,0)(-1, 0) の 22 つです。x→0x \to 0 では左右どちらから近づいても −∞-\infty に発散するため、yy 軸が垂直漸近線になります。

増減と凹凸

導関数は y′=1xy' = \dfrac{1}{x} です。

範囲y′y'増減凹凸
x<0x < 0負減少上に凸
x>0x > 0正増加上に凸

偶関数の導関数は奇関数になるという一般則が、そのまま現れています。二階導関数は y′′=−1x2y'' = -\dfrac{1}{x^2} で、定義域上つねに負ですから両方の枝が上に凸で、変曲点はありません。

1x\dfrac{1}{x} の原始関数

この関数の要点は次の公式です。

∫dxx=ln⁡∣x∣+C\int \frac{dx}{x} = \ln|x| + C

1x\dfrac{1}{x} は x<0x < 0 でも定義されているのに ln⁡x\ln x はそこで定義されないので、絶対値が必要になります。実際 x<0x < 0 では ddxln⁡(−x)=−1−x=1x\dfrac{d}{dx}\ln(-x) = \dfrac{-1}{-x} = \dfrac{1}{x} となり、負の側でも正しく成り立ちます。

積分定数についての注意

ただし定義域が x=0x = 0 で 22 つに切れているため、原始関数は厳密には x>0x > 0 と x<0x < 0 で別々の定数をもちます。ln⁡∣x∣+C\ln|x| + C と 11 つの定数で書くのは、片方の区間だけを考えているときの省略です。区間をまたぐ広義積分 ∫−11dxx\int_{-1}^{1}\dfrac{dx}{x} が定まらないのも、同じ理由によります。

増え方の遅さ

∣x∣→∞|x| \to \infty で発散はしますが、その速さは極端に遅く、どんな正のべき ∣x∣a|x|^{a} にも追いつけません。ln⁡106≈13.82\ln 10^{6} \approx 13.82 で、y=100y = 100 に達するには ∣x∣=e100≈2.7×1043|x| = e^{100} \approx 2.7 \times 10^{43} が必要です。

応用

  • 対数微分法では ∫f′(x)f(x) dx=ln⁡∣f(x)∣+C\int \dfrac{f'(x)}{f(x)}\,dx = \ln|f(x)| + C の形で使い、ff が負になる区間でもそのまま扱える
  • 複素数の対数 ln⁡z=ln⁡∣z∣+iarg⁡z\ln z = \ln|z| + i\arg z では、この関数がちょうど実部にあたる
  • 二次元のラプラス方程式の基本解が ln⁡r\ln r で、無限に長い直線電荷の電位や二次元の渦の流れがこの形になる