関数 y=x∣x∣ のグラフ
y=x∣x∣ は、x≥0 では x2、x<0 では −x2 となる関数です。放物線の右半分をそのまま使い、左半分を原点対称に折り返した形で、偶関数である x2 を奇関数に作り替えたものといえます。1 回だけ微分できて 2 回はできない関数の、もっとも簡単な例として知られています。
定義域と対称性
定義域も値域もすべての実数です。f(−x)=(−x)∣−x∣=−x∣x∣=−f(x) より奇関数で、原点に関して点対称です。x>0 では正、x<0 では負で、x 切片は原点だけです。
| x の範囲 | y | y′ | y′′ |
|---|
| x<0 | −x2 | −2x | −2 |
| x=0 | 0 | 0 | 定まらない |
| x>0 | x2 | 2x | 2 |
増減
導関数は x>0 で 2x、x<0 で −2x ですから、まとめて次のように書けます。
原点でも右からと左からの微分係数がどちらも 0 で一致するので、y′(0)=0 が定まります。つまり導関数は実数全体で定義され、しかも連続です。y′≥0 なので単調に増加し、極大も極小もありません。
1 回微分できて 2 回できない
導関数 y′=2∣x∣ は連続ですが、絶対値関数なので原点で微分できません。二階導関数は x>0 で 2、x<0 で −2 となり、原点では +2 と −2 に食い違います。したがってこの関数は 1 回連続微分可能ですが、2 回は微分できません。なめらかさには段階があるということを、一行の式で示せる例になっています。
凹凸
二階導関数の符号から、x>0 では下に凸、x<0 では上に凸です。原点で凹凸が入れ替わるので、そこが変曲点です。接線は水平でありながら極値ではない、という点は y=x3 と同じです。
| 関数 | 原点での傾き | 原点 | 何回微分できるか |
|---|
| y=x3 | 0 | 変曲点 | 何回でも |
| y=x∣x∣ | 0 | 変曲点 | 1 回だけ |
2 つのグラフは x=0 と x=±1 で交わり、原点の近くでは x∣x∣ のほうが外側にふくらみます。
逆関数
y≥0 の側では y=x2 から x=y、y<0 の側では y=−x2 から x=−−y です。まとめると、逆関数は次のように書けます。
y=sign(x)∣x∣ 符号つきの平方根と呼ばれる形で、偶関数である ∣x∣ を奇関数に作り替えたものにあたります。もとの関数と同じ作り方をしている点が対応しています。
積分
原始関数は 3x2∣x∣ です。x>0 では 3x3、x<0 では −3x3 となり、どちらの区間でも微分すると x∣x∣ に戻ります。奇関数なので、原点について対称な区間での定積分は 0 になります。
応用
速さの 2 乗に比例する空気抵抗は、向きまで含めると −v∣v∣ に比例する形で書かれます。単に −v2 とすると、後ろ向きに動いているときも抵抗が後ろ向きになってしまうためです。∣v∣ を掛けることで大きさは 2 乗のまま、向きだけが運動と逆になります。速度を横軸にとった抵抗力のグラフが、まさにこの曲線です。数値計算では、なめらかさの階級を確かめる試験関数としても使われます。