y=ln1+1x2x1x2y = \ln\dfrac{1+\sqrt{1-x^2}}{x} - \sqrt{1-x^2}

追跡線 y=ln1+1x2x1x2y = \ln\dfrac{1+\sqrt{1-x^2}}{x} - \sqrt{1-x^2} のグラフ

y=ln1+1x2x1x2y = \ln\dfrac{1 + \sqrt{1-x^2}}{x} - \sqrt{1-x^2}追跡線(トラクトリックス)と呼ばれる曲線です1。名はラテン語の「引く」に由来し、長さ 11 のひもの一端を yy 軸に沿って引いていくとき、反対の端につないだ物体が描く軌跡にあたります。逆双曲線余弦を使えば y=arcosh1x1x2y = \operatorname{arcosh}\dfrac{1}{x} - \sqrt{1-x^2} とも書けます。

定義域と値域

  • 定義域は 0<x10 < x \leq 1
  • 値域は y0y \geq 0
  • 単調に減少する
  • yy 軸が垂直漸近線

x=1x = 1 では y=0y = 0x0+x \to 0^{+} では ln2x1+\ln\dfrac{2}{x} - 1 \to +\infty となります。

接線の長さが一定

この曲線を特徴づけるのは接線の性質です。

y=1x2xy' = -\frac{\sqrt{1-x^2}}{x}

(x,y)(x, y) での接線が yy 軸に達するまでの横方向の変化は xx、縦方向の変化は yx=1x2|y'| \cdot x = \sqrt{1-x^2} です。

x2+(1x2)=1\sqrt{x^2 + (1-x^2)} = 1

接線の長さはつねに 11 になります。ひもの長さが変わらないこと、そしてひもがつねに物体の進む向きを指すことが、そのままこの式になっています。

単調性と凹凸

0<x<10 < x < 1y<0y' < 0 なので単調に減少します。x=1x = 1 では y=0y' = 0 で、曲線は xx 軸に接するように入ります。二階導関数は y=1x21x2y'' = \dfrac{1}{x^2\sqrt{1-x^2}} でつねに正ですから下に凸で、変曲点はもちません。

弧長は無限

(1,0)(1, 0) から横座標 xx の点までの弧長は ln1x\ln\dfrac{1}{x} で、x0x \to 0 とともに発散します。曲線は yy 軸に限りなく近づきますが、決して届きません。長さは無限ですが、回転させた面積と体積は有限にとどまります。

擬球

この曲線を漸近線である yy 軸のまわりに回転させた曲面を擬球といいます21+(y)2=1x21 + (y')^2 = \dfrac{1}{x^2} なので線素は ds=dxxds = \dfrac{dx}{x} となります。

片側全体
表面積2π2\pi4π4\pi
体積π3\dfrac{\pi}{3}2π3\dfrac{2\pi}{3}

擬球全体は、半径 11 の球と表面積が等しく、体積はちょうどその半分になります。

負の曲率と非ユークリッド幾何

擬球はガウス曲率がいたるところ 1-1 の曲面です。球面が正の一定曲率をもつのに対し、こちらは負の一定曲率をもつので「擬球」と呼ばれます。18681868 年にベルトラミは、この曲面の上では平行線公準が成り立たないこと、すなわちロバチェフスキーの非ユークリッド幾何が局所的に実現されることを示しました。

歴史

懐中時計を鎖で机の上を引きずるとどんな線を描くか、という問いをペローが出し、ニュートンとホイヘンスが解きました。トラクトリックスという名は 16921692 年のホイヘンスによります。

  1. Tractrix、Wikipedia
  2. Pseudosphere、Wikipedia