y=arcsin⁡(sin⁡x)y = \arcsin(\sin x)

三角波 y=arcsin⁡(sin⁡x)y = \arcsin(\sin x) のグラフ

y=arcsin⁡(sin⁡x)y = \arcsin(\sin x) は、逆正弦と正弦を続けて施した関数です1。互いに逆の操作なので xx に戻りそうですが、arcsin⁡\arcsin の値域が [−π2,π2]\left[-\dfrac{\pi}{2}, \dfrac{\pi}{2}\right] に限られているため、そこからはみ出した分が折り返されて三角波になります。

区分ごとの式

区間式傾き
−π2≤x≤π2-\dfrac{\pi}{2} \leq x \leq \dfrac{\pi}{2}y=xy = x11
π2≤x≤3π2\dfrac{\pi}{2} \leq x \leq \dfrac{3\pi}{2}y=π−xy = \pi - x−1-1

最初の区間では sin⁡\sin と arcsin⁡\arcsin がちょうど打ち消し合います。次の区間では傾きが −1-1 に変わり、以降はこれが 2π2\pi ごとにくり返されます。

定義域と値域

  • 定義域はすべての実数
  • 値域は −π2≤y≤π2-\dfrac{\pi}{2} \leq y \leq \dfrac{\pi}{2}
  • 周期は 2π2\pi
  • 奇関数

sin⁡\sin が奇関数で arcsin⁡\arcsin も奇関数ですから、合成したこの関数も奇関数で原点に関して点対称です。

角をもつこと

グラフは傾き 11 と −1-1 の線分を交互につないだ折れ線です。頂点は x=π2+nπx = \dfrac{\pi}{2} + n\pi にあり、値は ±π2\pm\dfrac{\pi}{2} です。そこでは左右の傾きが 11 と −1-1 で食い違うので微分できません。

連続だが至るところなめらかではない、という点で、sin⁡x\sin x のようななめらかな波とは性格が違います。零点は x=nπx = n\pi です。

方形波との関係

導関数を計算すると、方形波が現れます。

ddxarcsin⁡(sin⁡x)=cos⁡x1−sin⁡2x=cos⁡x∣cos⁡x∣=sgn⁡(cos⁡x)\begin{align*} \frac{d}{dx}\arcsin(\sin x) &= \frac{\cos x}{\sqrt{1-\sin^2 x}} \\ &= \frac{\cos x}{|\cos x|} = \operatorname{sgn}(\cos x) \end{align*}

つまり三角波の導関数は方形波です。逆にいえば、+1+1 と −1-1 を交互にとる方形波を積分すると三角波になります。跳びをもつ関数を積分すると角をもつ関数になる、という対応がここに見えます。

フーリエ級数

arcsin⁡(sin⁡x)=4π∑k=0∞(−1)k(2k+1)2sin⁡((2k+1)x)\arcsin(\sin x) = \frac{4}{\pi}\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^{k}}{(2k+1)^{2}}\sin\bigl((2k+1)x\bigr)

奇数倍の周波数だけが現れ、係数は 1(2k+1)2\dfrac{1}{(2k+1)^{2}} で減っていきます。

波形なめらかさ係数の減り方
方形波跳びをもつ1n\dfrac{1}{n}
三角波角をもつ1n2\dfrac{1}{n^{2}}

方形波より落ち方が速く、そのぶん少ない項でよく近似できます。積分すると係数が一段速く減るという一般則が、ここに現れています。

応用

三角波はシンセサイザーの基本波形の一つで、方形波よりやわらかく正弦波より明るい音になります。これは高次の倍音が 1n2\dfrac{1}{n^{2}} で減るためです。電子回路では、三角波と直流を比較してパルス幅変調の信号を作る用途にも使われます。

  1. Triangle wave、Wikipedia