y=sinhxxy = \dfrac{\sinh x}{x}

関数 y=sinhxxy = \dfrac{\sinh x}{x} のグラフ

y=sinhxxy = \dfrac{\sinh x}{x} は、双曲線正弦を xx で割った関数です。sinc 関数 sinxx\dfrac{\sin x}{x} と形はそっくりですが、振る舞いはまるで違います。振動して減衰していく sinc に対し、こちらは振動せず、ひたすら増えていきます。

定義域と極限

x=0x = 0 では分母が 00 になるので定義域は x0x \neq 0 です。ただし sinhxx\sinh x \approx x が原点の近くで成り立つので、次の極限が存在します。

limx0sinhxx=1\lim_{x \to 0}\frac{\sinh x}{x} = 1

f(0)=1f(0) = 1 と定めれば実数全体で連続になり、実際そう定義するのがふつうです。除去可能な特異点で、グラフの上ではその一点だけが穴になります。

対称性と値域

sinh\sinhxx も奇関数なので、商は偶関数です。グラフは yy 軸に関して対称です。級数に展開すると次のようになります。

sinhxx=1+x26+x4120+=n=0x2n(2n+1)!\frac{\sinh x}{x} = 1 + \frac{x^2}{6} + \frac{x^4}{120} + \cdots = \sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^{2n}}{(2n+1)!}

第二項以降がすべて正なので y1y \geq 1 で、値域は 11 以上のすべての実数です。零点はありません。

sinc との比較

sinc 関数の級数は係数の絶対値が同じで、符号だけが交互に入れ替わります。

sinxx=1x26+x4120\frac{\sin x}{x} = 1 - \frac{x^2}{6} + \frac{x^4}{120} - \cdots

この符号の違いだけで、一方は振動して 00 へ減衰し、他方は単調に増加して発散します。

項目sinxx\dfrac{\sin x}{x}sinhxx\dfrac{\sinh x}{x}
x=0x = 0 での極限1111
値域0.217y1\approx -0.217 \leq y \leq 1y1y \geq 1
零点x=nπx = n\pin0n \neq 0なし
遠方振動しながら 00指数的に発散
原点最大最小

sin\sinsinh\sinh の関係がそのまま持ち込まれた形で、二つのグラフを並べると違いがよく見えます。

増減と遠方

導関数を調べると x>0x > 0 で正なので、右半分では単調に増加します。偶関数なので左半分では単調に減少し、原点が最小です。

xxsinhxx\dfrac{\sinh x}{x}
0011
111.1752\approx 1.1752
221.8134\approx 1.8134
333.3393\approx 3.3393

xx が大きいところでは sinhxex2\sinh x \approx \dfrac{e^{x}}{2} なので yex2xy \approx \dfrac{e^{x}}{2x} となり、指数関数を xx で割った速さで発散します。水平漸近線はありません。

一様分布との関係

区間 [1,1][-1, 1] 上の一様分布に対して etxe^{tx} の平均をとると、この関数が現れます1

1211etxdx=etet2t=sinhtt\begin{align*} \frac{1}{2}\int_{-1}^{1}e^{tx}\,dx &= \frac{e^{t} - e^{-t}}{2t} \\ &= \frac{\sinh t}{t} \end{align*}

つまりこの関数は、一様分布の積率母関数にほかなりません。確率論で一様分布を扱うときに自然に現れる形です。

応用

球ベッセル関数の言葉でいうと、sinxx\dfrac{\sin x}{x}j0(x)j_0(x)sinhxx\dfrac{\sinh x}{x} が変形球ベッセル関数 i0(x)i_0(x) にあたります2。波動方程式が振動する解をもつのに対し、拡散方程式や静電場の方程式が指数的に増減する解をもつという違いが、この二つの関数の違いに対応しています。

  1. Moment-generating function、Wikipedia
  2. Bessel function、Wikipedia