y=gdx=arcsin(tanhx) グーデルマン関数 y=gdx のグラフ
y=gdx=arcsin(tanhx) はグーデルマン関数と呼ばれ、三角関数と双曲線関数を複素数を使わずに結びつける関数です1。19 世紀のドイツの数学者グーデルマンにちなみます。地図のメルカトル図法における緯度そのものでもあります。
定義域と値域
- 定義域はすべての実数
- 値域は −2π<y<2π
- 単調に増加する
- 奇関数
tanhx の値域が (−1,1) なので arcsin の中身は必ず定義域に収まります。y=±2π が水平漸近線で、値はそこに限りなく近づきますが決して届きません。
対称性と増減
tanh も arcsin も奇関数なので、合成したこの関数も奇関数で、原点に関して点対称です。導関数は次のように簡単な形になります。
dxdarcsin(tanhx)=1−tanh2x1⋅sech2x=sechxsech2x=sechx つまり gd′(x)=sechx で、積分によって定義することもできます。
gdx=∫0xsechtdt sechx はつねに正なので単調に増加します。原点での傾きは sech0=1 なので、グラフは原点で直線 y=x に接します。
凹凸
二階導関数は y′′=−sechxtanhx で、符号は x の符号の逆です。x<0 では下に凸、x>0 では上に凸で、変曲点は原点ただ一つです。
三角関数と双曲線関数の橋渡し
この関数の要点は、θ=gdx とおいたときに成り立つ一連の等式です。
| 三角関数の側 | 双曲線関数の側 |
|---|
| sinθ | tanhx |
| cosθ | sechx |
| tanθ | sinhx |
| secθ | coshx |
これらがすべて同時に成立します。双曲線関数を複素数の助けなしに三角関数へ翻訳する辞書になっているわけです。
逆関数と正割の積分
逆関数は gd−1(y)=artanh(siny) ですが、これは次のようにも書けます。
gd−1(y)=ln(secy+tany) 右辺は積分 ∫secydy=ln∣secy+tany∣+C の主要部にほかなりません。正割の積分という、公式集で唐突に見える式の正体がこの関数だということです。
メルカトル図法
メルカトル図法では、緯度 φ の地点が地図の縦座標 ∫0φsectdt に描かれます2。これは gd−1(φ) ですから、逆に地図の縦座標 x に対応する緯度は gdx です。
| x(地図の縦座標) | gdx(ラジアン) | 緯度 |
|---|
| 0 | 0 | 0∘ |
| 1 | ≈0.8657 | ≈49.60∘ |
| 2 | ≈1.3018 | ≈74.58∘ |
| π | ≈1.4842 | ≈85.05∘ |
原点付近で y=x に接するのは赤道付近でひずみが小さいこと、両端で ±2π に漸近するのは極が無限の彼方へ追いやられることに対応します。地図サービスで広く使われるウェブメルカトルが緯度を ±85.05∘ で打ち切るのは、地図を正方形にするために x=±π で切っているからです。
- Gudermannian function、Wikipedia
- Mercator projection、Wikipedia